絶対に、紫の花がいい。
そう思いながら日曜日に花屋へ行った。

智くんが墓前に添えたカーネーションとお揃いになるし、なにより潤にとてもよく似合う色だと思ったからだ。




紫の花はそんなに種類もないだろうと見込んでいたけど、実際は15分経っても30分経っても決められなくて、俺は生花の清々しい香りに包まれながら店内をぐるぐる、ぐるぐるひたすら迷ってうろついていた。



「あのー…、」

すると、見兼ねた店員さんが声をかけてくれた。




「どんな花を、お探しですか?」

「あの…、恋人にプレゼントしたくて、」



ちょっと記念日なんです、と言うと

「あぁ、いいですね!お二人だけの記念日なんて。」

と、目尻をくしゃっとさせながら優しげに笑ってくれた。


まさか、初めてシた記念…とは言えねぇな。



紫の花をお探しですよね…と確認されて頷くと、彼はある花を薦めた。









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「花言葉は、“永遠の愛”なんだって。」




潤の家に着くなり、玄関で紫のチューリップの束を目の前に差し出すと、潤は何事かと挙動不審に目をくりくりさせて「は?」「え?」を繰り返した。



「俺のものになってくれて、ありがとう。」

「////っ…、だ、から翔さんて、ほんとそういう、の」

やめて…/////

と、顔を伏せたまま上げてくれないから、花言葉を教えてあげながらその真っ赤に染まった顔を覗きこんだ。





「へぇ…けど、永遠、て、ねぇ。」

ちょっと怖いな…と呟きながらもチューリップの束を大事そうに抱えてキッチンへ入っていく。



「永遠だよ。だって、俺は潤より長生きするって決めてるから。」

潤が逝くその瞬間まで、愛してる。
思ったんだよ、このあいだ。


「ふふっ、なにそれ。」







「あー、うち花びんとか無いよ、どうしよう。」

「じゃあ後で一緒に買いに行こう。」

「ん。」


 
部屋に花があるなんて、初めてかも。
と、潤はひとまずバケツに入れたチューリップを眺めては、綺麗だねーいい香りだねーと呟いて、微笑んだ。



「気に入った?」

「もちろん。ありがとう。」



「記念日だからね。」

「もう…それさぁ、やめてよ。」

「記念日だから、いつもと違うこと、シてみるか。」


また照れて俯くんだろうと思っていると、



「…いいよ、」

お花のお礼に…、ね。

後ろから俺の首に腕を絡めて、潤がそうささやいた。


「はっ!」

「ふふっ!翔さん、“はっ!”ってなに。」

手に入れたと思っていた俺の大切な恋人は、なかなか侮れない男だった…。




第3話、おわり。

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