前回の続きです。













家に着いて、買ってきた木たちに早速水をやった。

「だいぶ増えたなぁ。」


もともとは、潤が買ってきたひとつの鉢植えがきっかけだった。



「翔くんはパソコンで目を使うから、グリーンを見たほうがいい。」

とか言って、ある日潤は名前も分からない葉っぱの鉢植えを買ってきて、リビングの棚に置いた。

ちっこい木をひとつ置いてそれを見たところで眼精疲労は取れねぇだろ…と思ったけど、その発想が潤らしくて可愛いくて、それからはなんとなく俺が世話をしていた。


葉っぱはどんどん増えていって、幹もすくすく大きくなった。
愛着が湧くと仲間を増やしたくなって、そのうちリビングの棚に置ききれなくなった植物たちを、これまた潤が買ってきたこじゃれた移動式の棚に乗せて、あっちこっちに動かしながら育てている。



今日買った二つの木も、ここへ仲間入りだ。
特にこのガジュマルの、ぷくっとした足が絡んでるみたいな幹が気に入って、潤に早く見せたくてそわそわする。


ついでに買ってきたお惣菜をつまみに缶ビールを開けて適当に流し込み、自室に戻ってとりあえずパソコンにむかった。




次に時間を気にしたときにはそこから2時間くらいが経っていて、潤から

“これからメシ食って、帰るね”

とメッセージが入っていた。


ロック画面に戻した瞬間、ふと曜日が目に入って、あぁ明日は月曜日か…って、少しの下心を含みながら疲れて帰ってくる潤のために風呂のお湯を張った。





ガチャ、ガチャン

「ただいまー。」

「おー、おかえり。」

リビングから、少し声を張って応える。




「翔くん、見て見てこれ…、」

リビングに入ってきた潤は段ボールを抱えていて、中には…なんだか見知ったちっこい鉢植えが入っていた。

「え、潤これ、どした。」

「いつも店に来る花屋さんから買ったんだよ。翔くん気に入るかなーと思って。」

そう言いながら潤は、すでに8割ほど面積が埋まっている棚に鉢植えを乗せて、

「これがパキラでねぇ、こっちがコーヒーの木とガジュマ…、あれ?」

気づいた。



「あれ?うちガジュマルあった?」

「…俺が、今日買った…。」

「マジで?!」

「マジ…、」


すると潤は、手に持っていたガジュマルの鉢をそっと棚に置くと、

「翔くんっ、」

とはずみをつけて俺の名前を呼びながら腕をくんと引っ張った。


抱きすくめられて、

「すごい偶然…、なんか、うれしいね。」

って肩にぐりぐり頭を擦り付けてくるから、

「だね…、」

その後頭部をぽんぽんと撫でて、背中にぎゅっと腕を回した。



少し離れた顔の、頬を両手で包んでキスをする。

「ん、」

「っは…ぁ、しょう…く、」

「んぅ…ま、て…ん、風呂、沸いてる…」


止まらなくなりそうな唇を手で制して、風呂に行くよう促すと、

「一緒に、はいろ?」

俺の返事も聞かずに、潤は俺の腕を引いてさっさと風呂場へ連れ込んだ。





「翔くん、髪洗ってあげる。」

「いいよ、潤疲れてんだし。俺が洗ってやる。」

「いいの?」

「ほら、目ぇつぶってろ。」




「…ねぇ、翔くん。」

「んー?」

「明日、俺休みだよ…。」

「…知ってる、」



「…ふふっ、」

「なんだよ。」

「抱いても……いいよ、」

「…そのつもり。」

「えっち。」

「……流すぞ。」

「っあ!耳!耳に入っ…ちょっと!翔くん!」

優しくしてよーと、潤がぎゃーぎゃーわめく。



「知らねぇよ、俺は素人なんだから。」

「心意気の問題でしょ!」

「うるさい、ほらもう出るぞ。」

「えっちー。」


いいから、早く出るぞ。





第2話、おわり。

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