マグニチュード7クラスの首都直下型地震が今後30年以内に発生する確率は約70%である、と言われている。そのため、災害発生後の都民生活を維持、継続させるためにも公共施設の耐震化は急務である。

 

平成7年に発生した阪神淡路大震災で神戸港は大きな被害を受けた。震災前、神戸港は世界のコンテナ取扱量ランキングで5位であったが、震災後23位⇒39位⇒47位⇒52位と順位を下げている。震災後の復興が遅れ、神戸港の役割が釜山、香港、シンガポールへ移り、一度移ったコンテナが戻らず、今日の神戸港の状況にある。

 

都議会でも取り上げられたが、築地市場内の5棟の建物と1棟の駐車場棟が耐震不足であると指摘された。アスベストも多く残っているため、首都直下型地震が発生した場合、5棟の建物が倒壊し、アスベストが拡散することが予想される。

 

首都直下型地震が発生しても、都民への食糧供給は必要である。その時に倒壊した築地市場からの食糧供給は不可能であり、耐震化されている他の市場から供給されることになる。魚の取扱数量で言えば、築地市場は1日1676トン、一方都内の魚を扱う他の市場である大田市場では33トン、足立市場では67トンでしかなく、築地市場の取扱量には到底及ばず、大田市場、足立市場だけでは、築地市場の代替えにはならず、神奈川県や千葉県の市場から魚が供給されることになる。当然築地市場の取扱量はゼロである。また、この状態は、築地市場が再建されるまで続くこととなる。

 

築地市場が復旧後に現在と同じ取扱量になることは、神戸港の例を見ると、当分先になることが予想される。築地市場の取扱量は、築地市場事業者の売上高に当然比例するため、首都直下型地震発生後、当分の間は、売上ゼロであり、復興後、今と同じ売上になるのは期待薄である。

 

耐震化されている豊洲市場に移らず耐震化されていない築地市場に残れば、この様な流れは、当然のこととして予想できる。そのため水産仲卸事業者の多くの方が、なぜ移転に反対するのか、理由が全く理解できない。利益を確実に失うことになるのに。首都直下型地震が発生しても、発災直後に混乱はあると思われるが、豊洲市場に移転していれば、都民へ引き続き食料を提供できるのに。

 

豊洲市場移転は総合的に判断すると言われているが、豊洲市場が科学的には安全であると言われている中、都民への食糧の安定供給、事業者の事業の継続を考えても、総合的に判断して豊洲市場へ移転するべきと考える。