今春の国産販売開始受けて妊産婦と乳児の救護所に/東京・文京区
2019/01/14 7面
東京都文京区は、区内の大学や企業などと連携し、災害時に妊産婦や乳児を受け入れる避難所「妊産婦・乳児救護所」の備蓄品として、全国に先駆けて国産の乳児用液体ミルクを導入する。今春に製造・販売がスタートするのを受け、早ければ夏には救護所に備蓄される予定だ。
液体ミルクが今年の夏にも備蓄される文京区内の妊産婦・乳児救護所は、跡見学園女子大学、貞静学園短期大学、日本女子大学、東洋学園大学の4大学。大手菓子メーカーの江崎グリコ株式会社が今春の製造・販売開始に向けて開発を進めている液体ミルク計1920本に加え、哺乳瓶、吸い口も導入する予定だ。
また、備蓄から一定の期間が経過したものは、乳児健診や保育園の防災訓練などで希望者に配布する方針。
欧州などで広く普及している液体ミルクは、乳児に必要なビタミンやタンパク質など母乳に近い栄養素が含まれる。粉ミルクのようにお湯に溶かす必要がなく、哺乳瓶に移し替えれば、開封してすぐに乳児に与えることができる。また、常温で約半年間、保存可能なのが特長だ。
これまで液体ミルクは、国内での製造・販売が認められていなかったが、2016年4月に起きた熊本地震では、電気やガスなどのライフラインが寸断する中、フィンランドからの救援物資として支給され、役立った。昨夏の西日本豪雨でも海外製の液体ミルクが活用され、災害時の物資として需要が高まっていた。
公明党は、液体ミルクの災害用備蓄品としての普及をめざし、強力に推進してきた。17年2月に党女性委員会が政府と意見交換を実施。また同年3月の参院予算委員会で液体ミルクの早期解禁などを主張した。その結果、18年8月、厚生労働省が液体ミルクの規格基準を定めた改正省令を施行し、国内でも製造や販売が可能に。今春販売開始予定のグリコ製が国産第1号となる。
■公明、災害用としての活用提案
また、文京区が液体ミルクを避難所の備蓄品に追加することについて、公明党区議団(岡崎よしあき幹事長=区議選予定候補)が、18年8月に実施した19年度予算要望で要請。これに先立ち、17年5月の区議会災害対策調査特別委員会で、田中かすみ議員(区議選予定候補)が熊本地震での液体ミルクの活用例を挙げ、災害時の備蓄品の充実を訴えていた。
区担当課は「海外の液体ミルクに比べ輸入にかかる時間的ロスがないため、長時間の備蓄ができる」と期待。生後7カ月の赤ちゃんを育てる石川光代さんは「災害時、ガスや水道が使えなくなる可能性があるため、ありがたい」と語っていた。