202年29日【冬】


あれから少し時は経ち、木枯らしが吹き付ける寒い冬の季節となった。

今日は僕の誕生日で、今年で6歳になる。



アスター

「お母さん、おはよう」


レベッカ

「おはよう、アスター君。そう言えばネイディーンちゃんとは上手くいってるかしら?」


アスター

「あ、うん…仲良くしてもらってるよ」



あれから何度かネイディーンさんと会い雑談をして親睦を深めた、まだまだ知らない所ばっかりだけどネイディーンさんと話すのは楽しくないと言ったら嘘になる。


ネイディーンさんはこの国ではなくて違う国から来たみたいで外国の話を聞くのは知らない事を知れて楽しい。

でもお母さんに恋人のフリしてるなんて言えるわけないし少し濁った言い方になってしまう。



レベッカ

「それは良かった、さぁ朝食にしましょ」



お母さんは椅子から立ち上がってキッチンの方へと歩いていく。

昔は見上げていたお母さんも今ではツムジが見える、小さくなった体に少し寂しさを覚える。



アスター

「ありがとう、お父さん」



アス

「おめでとよ」



皆から祝いの言葉を貰うのは何度体験しても嬉しいものだ。

いつも通り朝食を食べ、のんびりしていると兄さんが僕に近寄って来る。



アス

「おら、誕プレ」



そう差し出されたのはボワの実と赤ラペルが中央に飾られ鮮やかなベリータルトだった。

兄さんは料理が苦手だったはずなのにまさかこんなクオリティの良いものを作れるのに驚きだ。



アスター

「兄さんどうしたのこれ…」


アス

「姉貴に教えてもらったんだよ、お前甘いもの好きだろ?」


アスター

「え、ありがとう。嬉しい…」



まさか兄さんが自分に手作りタルトをプレゼントしてくれる日が来ると思ってなかったから嬉しくて1口食べてみる。

タルトの甘さとベリーの甘酸っぱさがちょうど良いバランス、普通に美味しい。



アスター

「美味しい!」


アス

「ま、俺にかかればこんなもんだな」



兄さんは得意げな顔をしてご機嫌なようだ。

くるりとアイリスの方を向いて鞄の中から光の花を取り出す。



アス

「ほらアイリス、お前にやるよ」



アイリスが光の花を欲しがっていたからわざわざ探していたのだろうか?



ソール

「昨日探索終わって歩いてたらたまたま見つけたんだよね」


アイリス

「わぁ…きれい!ありがとなのおにいちゃん!」



アイリスは花を咲かせたように満面の笑みを浮かべて嬉しそうに光の花を眺める。



アイリス

「おにいちゃん、今日はわたしと一緒にあそんでくれる?」



アイリスは兄さんの裾を掴んでうるうると可愛く甘えている、その光景をお父さん達はにまにまと微笑ましそうに眺めていた。



アス

「し、仕方ねぇな…少しだけだからな」


アイリス

「うれしいの!」


アスター

「僕も途中まで一緒に行くよ」



上機嫌で玄関に走っていくアイリスを追いかける、兄さんは少し面倒くさそうにしてるけど何だかんだ面倒見良いんだよなぁ。



アス

「おーい、走って転ぶんじゃねぇぞー」


アイリス

「おにいちやんが手つないでくれたらだいじょぶなの!」


アス

「ったく、おいアスター。このあと時間空けとけよ、いいな?」



兄さんはそれだけを言い残してアイリスと一緒にどこかへと向かっていく。

この後時間空けとけって…何するんだろ?

そう突っ立っていると後ろから声をかけられる。



ディーン

「こんな所に突っ立ってるとどつかれちゃうぞ?」


アスター

「ディーン君か」



こいつはディーン・カーフェン、学校で唯一仲のいい友達の1人だ。



ディーン

「僕もあともう少しで成人になれるよ〜」


アスター

「ほんと早く大人になれよな、酒場行く相手居なくて寂しいよ」


ディーン

「僕もアスターと酒場行くの楽しみにしてるんだから」


アスター

「じゃぁ成人式の後酒場行こうね」


ディーン

「勿論、楽しみだ」



すると後ろの方から息を切らしながら走ってくる女の子が見える。



ソニア

「でぃ、ディーン君っ…!急に走らないでよ…」



この子はマルク君の妹のソニア・テルフォード。

良く昔は兄さんとマルク君と僕とソニアちゃんの4人で遊んだものだ。

ソニアちゃんはきょろきょろと辺りを見渡す。



アスター

「ごめんね、兄さんは今アイリスと遊んでるんだ」


ソニア

「あ、そっか…!そうなんだ…」



ソニアちゃんから聞いたことはないけど、多分兄さんが好きなんだろうなって言うのが態度で丸わかりだ。

今も兄さんがいないって知って明らか様に落ち込んでるし。



ディーン

「あ、ごめんね〜。アスターがいるの見かけてつい走っちゃった、大丈夫?」


ソニア

「う、うん!大丈夫だよ、ありがとう…」



この2人が仲良かったのは意外だったけど今ではもう見慣れたものだ。



ディーン

「じゃぁまたね、アスター」


アスター

「うん、気をつけてね」



ソニアちゃんはぺこりと軽くお辞儀をしてディーン君の後を追いかけて行った。

僕は兄さんが迎えに来るまで暇だからネイディーンさんに会いに行くことにした。



アスター

「ネイディーンさん」


ネイディーン

「あ、アスター君!」



ネイディーンさんは僕が現れると明るい笑みを浮かべて駆け寄って来てくれる。



アスター

「何してるの?」


ネイディーン

「これから図書館に行って本借りて来ようかなって…」


アスター

「そっか、最近は大丈夫?」


ネイディーン

「あ、うん!前より視線感じなくなったよ!」


アスター

「うん、良かった」



確かにネイディーンさんと一緒に居ると視線を感じる事が結構な頻度であった。

でもすぐにその気配がなくなったするから犯人は結構臆病な性格なのかもしれない。

念の為ネイディーンさんは家で過ごすか人通りの多い所を通るようにお願いしてある。



ネイディーン

「アスター君は何してるの?この後暇なら良かったら家でお茶でも…」


アスター

「あ、ごめん。これから兄さんと合流するんだ」


ネイディーン

「あ、そっか…。相変わらず仲良いんだね」


アスター

「そうかな、ごめんねせっかく誘ってくれたのに」


ネイディーン

「ううん、良いの。また誘うね」


アスター

「うん、その時は必ず」



寂しそうに俯く彼女の表情が晴れることを願ってそういったものの、兄さんとの予定が無ければ彼女の誘いに乗っていたのに。

少し自分も残念な気持ちになる。


中々迎えに来ない兄さんに痺れを切らして自分が向かえに行く事にした。



アスター

「兄さん……」



相変わらず兄さんはマイペースに釣りなんかしていた、僕に気づいた兄さんは壺を釣れて嬉しそうな笑顔を見せる。



アス

「おい見ろよ!高く売れるぞ」


アスター

「また今金欠なの?」


アス

「いつもの事だろ、よしじゃぁそろそろ行くか」


アスター

「てか何すんの?」


アス

「練習試合!俺と1発やろうぜ」


アスター

「へぇ…いいね、その話乗った」



僕達は王立練兵場へ移動し、武器を手に取る。

正直兄さんに勝てる自信はあんまりない、ほんとに最近兄さんは探索とかお父さんから戦い方教えて貰ったりしてるから強いと思う。


そうしてスタートと同時に兄さんは一瞬で僕との合間を縮め剣を振り下ろして来るから咄嗟の判断でそれを受け流す鉄がぶつかり合う音が響く。


兄さんの武器は両手剣だから威力は下がるものの素早さと攻撃スピードが増すから少し厄介だ。

一方的に攻撃されて受け流しているだけじゃいつまで経っても終わらない。


攻撃を仕掛けてみてもやっぱり防がられるか躱される、僕は隙を見て体を屈め足払いをすると、油断していた兄さんはバランスを崩し倒れるかと思ったがそう甘くはいかず。

僕の剣が兄さんに届く前に片手を地面をつき、バク転で攻撃を躱す。


間合いは取れたがすぐに距離を詰められ、今度は同じように兄さんも僕の足を狙う。

まさか相手の技を一瞬で吸収するとは思ってなくて気づいた時には地面の方が近かった。



アス

「俺の勝ち」



兄さんはにしし、といたずらっ子のような笑みを浮かべている。



アスター

「兄さん速すぎ…」


アス

「速さだけなら父さんといい勝負って言われたからな」


アス

「僕も頑張らないとなぁ、お父さんに相談しよ」


アス

「ま、弟に負けてらんねーよな」


アスター

「元々負けてないくせに、兄さん帰ろっか」


アス

「そうだな、まじもう眠い。疲れた、結構長く戦ってたぞ」



2人ともくたくたになったから家に帰ろうと歩いているとたまたまお父さんに遭遇する。



ソール

「2人ともこれからどこか行くの?」


アス

「いやもう帰る、疲れた」


アスター

「そろそろ日が落ちる頃だしね、お父さんはこれからどこ行くの?」


ソール

「俺はまだちょっと探索してくるかな


アス

「体力化け物」


ソール

「はは、最近どうも昔に比べて弱くなってる気がして…落ち着かなくてね」


アスター

「そう?お父さんは相変わらず桁違いの強さだと思うけど」


ソール

「ありがとう、気をつけて帰るんだよ」



最近お父さんがやたら探索またしてるなって思ってたら自分が弱くなったと思ってるのかな?

あんまり分からないけど、落ち込んでるお父さんは見たくないな…僕に出来ることがあればいいのに。


❊❊



家に着き玄関を開けると姉さんがちょうど来ていたようで僕達に気付くと駆け寄ってくる。



イベリス

「あ、アスター君お誕生日おめでとう!アス君が作ったタルトどうだった?」


アスター

「凄く美味しかったよ」


イベリス

「ふふ、良かったぁ。アスってばアスター君に喜んで貰えるか心配してたから」


アス

「姉貴、余計なこと言うなって」



兄さんはかったるそうにキッチンに向かっていくとアイリスに捕まったのか優しく可愛らしい声が聞こえてきた。



アイリス

「おにいちゃんいっしょに寝るの!」


アス

「チッ、勝手にしろよもう」



兄さんはアイリスを置いてすたすたと寝室の方へと歩いていく。



イベリス

「ふふ、仲良しね〜。じゃぁ私はもう行くね」


アスター

「うん、じゃぁね」



姉さんは自分の家に帰っていく、僕はアイリスに近寄るとアイリスは上をみあげる。



アイリス

「おにいちゃ、おかえりなの!」


アスター

「ただいま、今日は兄さんと寝るの?」


アイリス

「うん!おねえちゃんにいっしょに寝よってゆうき出せば寝てくれるって教えてもらったの!」



健気で可愛い妹の頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めてくれる。



アスター

「アイリスは可愛いね、次は僕と寝ようね」


アイリス

「うん!」



アイリスはとてとてと兄さんのいる寝室の方へと走っていき僕はその後を追いかける。



珍しい組み合わせに思わず笑みが零れてしまう、なんて微笑ましいんだろう。



アス

「お前も早く寝ろ」


アスター

「そうするよ、おやすみ兄さん」


アス

「…おやすみ」



僕も隣のベッドに寝転がり産まれたばかりの赤ちゃんのほっぺをつつく。

ぷにぷにで可愛い僕の弟、大きくなるのが今から楽しみだ。







【エルネアプラス】


【妊娠した時の反応】


アスター🦩

「え、ほんとに?」と驚きながらもすごく嬉しそうに歯を見せて笑ってくれる。「嬉しい、ありがとう」と抱き寄せられ額にキスをされる、自分が父親になるなんてしかも好きな人と結婚出来るのが夢みたいで最高に幸せって感じの空気を出してくれる。



アス🦭

赤ちゃん出来たと伝えると驚いたような顔をして無言で抱きしめてくる。自分に子供が出来ることも考えられなかったしいざ実感すると感無量で言葉に出来なかった。『泣いてるの?』と聞けば涙声で「…泣いてない」と返って来る。



マルク🦎

「え…!まじで!?やっ…たあー!!」と全身を使って大喜びしてくれる、もう既に涙目だし強く抱きついて離そうしない。「早く皆に伝えたい」と皆に報告するのが楽しみで仕方ないと言った感じの反応をくれる。こんなに大喜びしてくれるなんて思わなかったから愛されてるなぁって実感する。