※前回の続き


202年1日【冬】



マルク

「てなわけで、オレらは親友なわけ」


アスター

「出会ったその日に一緒に居るのを決めるとか…」


マルク

「イカれてるよな」



マルクは微妙な顔してる僕の顔を見て吹き出すように笑っていた。

兄さんが時々夜出かけている事は知ってたけど、そこでマルク君と出会ったんだ。


なんか前から思っていたけど、2人だけの特別な空気感があると思ってたんだよね。

あの兄さんが誰か特定の人といるなんて天変地異と思ったし。



アスター

「僕も大人になったし夜遊び着いて行っても良い?」


マルク

「は!?いや、ダメに決まってるだろ。アスターにはまだ早い」



さほど期待はしてなかったけど、やっぱりダメだったか。

2人はなにか特別な事がある時は僕を仲間には入れてくれないのが昔からの決まりだ。



マルク

「じゃ、オレはそろそろ帰るよ」


アスター

「うん、またね」



マルクは颯爽と去っていき空になったカップをキッチンへ持っていく。

洗い物をしようとすると勢い良く音を立てて玄関の扉が開かれると思ったら兄さんが綺麗な花束を手に持って僕に近寄ってくる。



アスター

「え、ありがとう…」



色とりどりの華やかな花が束ねられていて花のいい香りが微かに感じる。

こういうのは女の子が貰うものだとばかり思っていたから予想外すぎて固まってしまう。



アス

「なんだよ、もっと喜べよなー」


アスター

「嬉しいよ、でも。はは、突発的すぎてリアクションすら取れなかった」


アス

「てなわけで、改めて成人おめでとう」


アスター

「ありがとう兄さん、てか用事ってこの事だったの?」


アス

「そうだけど、買うの忘れてたんだよな危ねー」


アスター

「兄さんらしいや」


アス

「てかさ、マルクきた?」



兄さんは辺りを見渡して首を傾げる、こういう時の兄さんの勘は鋭い。



アスター

「うん、よく分かったね」


アス

「あいつの匂いしたからおかしいと思ったんだよな、まぁいいや。じゃ俺そろそろ行くから」


アスター

「え、もう?」


アス

「んだよ、寂しがんなって。また遊んでやるから、じゃなあ」



兄さんは僕の頭に手をぽんと軽く置いてまたすぐに家から出て行く。

すると入れ違いで姉さんが玄関から顔を出てきたのだ。



イベリス

「あれ今凄い勢いでアス君出てったけど…」


アスター

「なんか用事あるらしい、所でどうしたの?姉さん」


イベリス

「どうしたのじゃないよ〜、改めてお祝いしに来たの!」



姉さんはプクッと頬を膨らませて僕に近寄ってくる、結婚して変わった服装も最近ではもう見慣れたもんだ。



イベリス

「かっこよくなったね、お母さん似だ」


アスター

「そう?兄さんには負けるよ」


イベリス

「これから沢山モテると思うけど、女の子は大切にね」


アスター

「うん、分かってるよ」



姉さんは優しく微笑み僕の手を取ったかと思うと自分のお腹に当ててくる。



ぽこん、と手に振動が伝わり何とも言えない感情に包まれる。

生命の神秘と言うか、歯がゆい感じがした。



アスター

「身体に気を付けるんだよ」


イベリス

「うん、最近ではニーノ君も凄い過保護だから危険とかなさそう」


アスター

「はは、確かに義兄さんなら姉さんの事何もさせてくれなさそう」


イベリス

「本当にそうなんだよね、有難いけど」



幸せそうな姉さんを見てるとこっちまで幸せな気分になれる。



イベリス

「じゃぁ私そろそろ行くね」


アスター

「送ってこうか?」


イベリス

「ふふ、大丈夫だよ。ありがとう」



姉さんを玄関まで見送ってこれから何をしようかと考えていたら城の門の方にお父さんの姿が見えた。

手招きしているように見えたからお父さんの方まで歩いていく。



アスター

「うん、行くよ」


ソール

「何も予定とかなかった?」


アスター

「…?うん」


ソール

「そっか、アスターは良い子に育ったな」


アスター

「お父さんってたまに理解出来ない事言うよね」


ソール

「気にするな」



その時心の中でソールは昔成人した自分はすぐに女遊びばっかりしてた事を思い出しこの遺伝がアスターにまで継がれなくて良かったと思っていた。

無論、アスが夜遊びしてる事は知っているがかつての自分がそうだったので何も言わないで目を瞑っている。



こうしてお父さんと肩を並べて歩くのも変な感じだ、前までは手を繋いで後ろを着いてきてたと思うと妙な感覚になる。



ソール

「子供の成長は早いもんだな」


アスター

「でも今お母さん妊娠してるから5人目でしょ?次産まれてくる子が成人した時僕何歳なんだろ…」


ソール

「アスターももう結婚してるだろうな、今はそういう相手は頭にいる?」


アスター

「いないよ…いまいち恋ってものが分からない」


ソール

「いつか分かるよ、俺みたいにビビって一目惚れするかもしれないしね」


アスター

「そうかな?」


ソール

「じゃぁ、アスターの好きなタイプは?見た目の」


アスター

「え…うーん、特にないかも。全然思い浮かばない」


ソール

「アスターは欲がないんだね〜、アスとは真反対だ?」



その時のお父さんの黄金色の瞳が鋭く、全てを見抜かれてしまいそうな、息が止まる。

でもすぐにお父さんはヘラっと笑い、目を逸らす。



ソール

「まぁ、あったとしても父親と恋バナとかしたくないか」


アスター

「別にそんな事ないけど…」



お父さんは昔からそういう事がたまにある。

自分が本音や感情を隠した時、後ろめたい時にあの眼で見られると酷く居心地が悪い。

本当に全て見透かされているみたいで、きっとお父さんに隠し事なんて出来ないだろう。



ソール

「ま、理想が高くてもいつか出会えるよ縁があれば。俺とレベッカみたいにね」


アスター

「…そうだと、いいな」



恋愛を考えてないと言えば嘘になる、でも周りの子で考えてみてもあまりピンと来ない。

僕の好きなタイプなんて、絶対これって心に決めてるものは無いけど。


唯一あるとしても恥ずかしくて誰にも言えないかな。

水みたいな子、なんて。

意味わからなさすぎて理解されないだろう。


その後は普通に世間話をしながら採取して家に帰った。

成人したと言っても前とやる事は変わらず賑やかになる訳でもなく平穏に終わっていく。


明日も何事も起こらずにこのまま静かに暮らせれば良いなと思いながら眠りに着くのだった。







【エルネアプラス】


【急に抱きしめてみた】


アスター🦩

「わ、どうしたの?」と至って冷静な感じ、でもすごく優しい眼差しでこちらを見て頭を撫でておでこにキスしてくれる。どんな理由であれ嬉しい。



アス🦭

「おわっ!びっ…くりした…なんだよ」突然抱き締められて普通にびっくりするが、ちゃんと腰に手を回し抱きしめてくれる。顔を見ると眉間にしわ寄せて不思議そうにこちらを見てる、照れてくれても良いのにと思う妻なのだった。



マルク🦎

「おお〜なになに急に甘えたくなっちゃった?」めっちゃニコニコして嬉しそうに笑う、抱きしめてくれたお礼に抱きしめ返すし何倍もでかえってくる。幸せな気分になるしテンション上がりすぎて持ち上げられくるくる回されるかもしれない。