指しゃぶりですね、わかります | サイコセラピスト(心理療法士) 棚田克彦 公式ブログ

こんにちは。

サイコセラピストの棚田克彦です。

http://www.tanada-katsuhiko.com/index.php?FrontPage  




サイコセラピー(心理療法)を勉強したことがある方なら

「ミルトン・H・エリクソン」という名前を誰しも一度は聞いた

ことがあるとは思います。




故ミルトン・H・エリクソン博士(M.D. Milton Hyland Erickson)は

天才的な催眠療法家として知られた精神科医で、

治療のプロセスにおいてしばしば斬新な手法を用いた事で

知られています。




天才的で斬新な手法とは、

例えばこんな症例があります。




6才の指しゃぶりの男の子。

彼は左の親指だけしゃぶっていた。

エリクソンは言った。

「それじゃあ不公平だよ。

他の指も同じくらい時間をかけてあげなきゃ」

右の親指もしゃぶるよう、

最終的には、

他の指も全部しゃぶるようにと

少年は告げられた。

指しゃぶりを左の親指と右の親指に分散させるだけで、

指しゃぶりの習慣がすぐに50%減少した・・・(後略)。




確かに

天才的で

斬新な手法ですね。




「症状を再現させて強化行動を促すと、

症状が軽減、消失する」

というパラドックス的技法は、

今日、多くの心理療法において

用いられている技法(逆説的介入と呼ぶ)ですが、




なぜ、男の子に全部の指をしゃぶるよう促すと

指しゃぶりの習慣が改善したのか、

その理由がわかりますか?




答えは、

『強迫行為をやりたくなる衝動の強度は、

その衝動を引き起こす原因となる

ドライバー・サブモダリティーの強度に

比例しない(非線形的)』

という事実と関係があります。




もっと噛み砕いて

わかりやすく説明しましょう。




では、

自分自身が指しゃぶりを止められない子どもに

なったところを想像して下さい。




そして、

自分の左右どちらかの親指をジックリと見ます。

それは、

とても、とても、しゃぶりたくて、しゃぶりたくて

しようがないモノです。

それをしゃぶると、とっても安心できます。




頭の中で

その親指のイメージを大きくして

自分の口元へ近づけてみましょう。




どうですか?

もっとしゃぶりたくなりませんか?




さらに続けます。




心の中で

「絶対にその親指をしゃぶってはいけない」

という誰かの声を聴いてください。

そして口元に近づけた親指をジックリ見ます。




どうですか?

さらに、しゃぶりたくなりませんか?




以上が

指しゃぶりが止められない男の子が

普段経験しているプロセスです。

これでは指しゃぶりが止められなくても

当然ですよね。




では次に、

エリクソン医師の指示に従ったプロセスを

経験してみましょう。




まず最初に

自分の左右どちらかの親指をジックリと見ます。

それは、しゃぶりたいモノです。




次に

しゃぶらなければならない指が2本に増えます。

どちらの指も平等にしゃぶらなければなりません。




ここで

反応に2通りの可能性があります。




1つ目の可能性は、

しゃぶるべき指が2本に増えたことで、

しゃぶりたい衝動も強くなる場合です。




もう1つの可能性は、

しゃぶるべき指が2本に増えたことで、

しゃぶりたい衝動が2箇所に分散して、

しゃぶりたい衝動が弱くなる場合です。




どちらの反応が起こったとしても

問題はありません。




なぜなら、

しゃぶるべき指の本数を

2本、3本、4本・・・・・と増やしていくと、

途中までは衝動が増加したとしても、

必ずどこかで衝動が麻痺して、

指をしゃぶりたい気持ちが弱まったり

完全に消失してしまうからです。




しゃぶるべき指の本数を増やすのとは

別のやり方もあります。




まずは先ほどと同じように、

自分の左右どちらかの親指をジックリと見ます。

それは、しゃぶりたいモノです。




次に、

頭の中で

その親指のイメージを大きくして

自分の口元へ近づけます。

そして、さらに、

そのまま指のイメージをどんどん大きくします。

どんどん大きくして、自分の身体よりも大きなサイズにします。




さあ、どうですか?

自分の身体よりも大きな指をしゃぶりたい衝動は、まだありますか?

衝動が弱まったり、消失してはいませんか?

もし必要であれば、

指を地球や宇宙よりも大きなサイズにします。

すると、

必ず衝動は消えます。




『強迫行為をやりたくなる衝動の強度は

その衝動をを引き起こす原因となる

ドライバー・サブモダリティーの強度に

比例しない(非線形的)』

という意味がお分かりいただけたでしょうか?




今回の事例では、

ドライバー・サブモダリティー

   =    「しゃぶるべき指の本数」、または、
(イコール)
         「しゃぶりたい指のイメージの大きさ」

となります。




「しゃぶるべき指の本数」や

「しゃぶりたい指のイメージの大きさ」

といったドライバー・サブモダリティー

の強度を増加させていくと、

ある程度までは強迫行為(指しゃぶり)の

衝動は強くなります。




ところが、

ドライバー・サブモダリティーの強度が、

ある一定の限度(しきい値)を超えた途端に

脳内のメンタルマップ(認知)に変化が起こり、

強迫行為の衝動が弱まったり、

完全に消失してしまうのです。




天才的で斬新なエリクソン医師の手法も、

その仕組みさえわかってしまえば

「なーんだ」って感じですよね。




私は以前にこの方法を応用して

あるクライアントの強迫性障害を

解消したことがあります。




クライアントの悩みは確認恐怖で、

ガスの元栓を消したかどうかが不安で

一日に何回も(100回以上)確認するので、

外出するにも困難をきたしているという状態でした。




また、

病院ではSSRIと抗精神薬を処方されているものの

本人はその効果に納得していないようでした。




私がやったことはこうです。




つまり、

クライアントを大きなビルに連れて行って、

各フロアーにある給湯室のガスコンロの火を付けては消す

という行為を次から次へと連続してさせました。




ガスコンロを消した後に、

火がちゃんと消えたかどうかを目視で確認することも

禁止します。




とにかく、

次々と火の付け、消しをさせて、

クライアントの不安を極限まで強化しました。




「もう一度戻って、コンロの火がちゃんと

消えたかどうかを確認したい」

「私のせいでビルが火事になって

人が死んだらどうしよう・・・」

などと言いながら

クライアントは涙を流して泣いていました。




それでも、どんどん続けさせました。




すると何が起こったでしょう?




ビル内のフロアーを次々と移動しながら、

あまりにもたくさんのコンロの火を付けたり、

消したりをさせたので、

クライアントは混乱して、

もう一度戻って火の確認しようにも、

どこのコンロの火を付けたり、消したりしたかが

分からなくなってしまったのです。




確認すべき対象がわからなくなってしまったのだから、

不安の質にも変容が起こります。




先ほど出てきた

6歳の男の子が全部の指を平等に

しゃぶるように言われたことで、

指をしゃぶりたい衝動が軽減、消失して

しまったのと同じです。




確認恐怖を抱えていたクライアントは、

同様のセラピーを数回繰り返したことで

症状が大きく改善し、

症状が完全に消えたわけではないものの

薬を服用することなく日常生活を営めるようになりました。




さて、

今回の記事はちょっとロングバージョンになりましたが、

結局、何が言いたいのかと言うと、




●エリクソンのような天才が使う斬新なセラピーのテクニックは、

 一見しただけでは魔法と見分けがつかない




●しかし、魔法のように天才的で斬新なセラピー・テクニックも、

  種を明かして、その仕組みとやり方とを理解してしまえば

 私たちのような凡人にも同様の成果が再現可能である




ということが伝えたかったわけです。




最近はメルマガをご無沙汰していましたが、

東京、大阪、福岡とワークショップで全国を巡業する合間に

今回の記事に書いたようなことを

一人でコソコソと考えていました。




この続きは、

1月のワークショップでお話しようと思います。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

------------------------------------------------
          現役プロセラピストが教える
    サイコセラピー(心理療法)における魔法の使い方
  
   ◆『マジック・オブ・サイコセラピー・2日間(沖縄)』◆
------------------------------------------------
(日時)
    1月21日(土)、22日(日) 10時-18時
(参加費)
    2万1千円(税込)
(場所)
    那覇市内 (那覇市水道局庁舎B棟3F 厚生会館)
(詳細とお申し込み)
    
http://www.tanada-katsuhiko.com/index.php?MOfPOkinawa




「ビリーフチェンジ公開講座(2日間拡大版)」もよろしく。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

------------------------------------------------
  ◆『ビリーフチェンジ公開講座・2日間(東京)』◆
------------------------------------------------
(日時)
    12月10日(土)、11日(日) 10時-18時
(参加費)
    2万1千円(税込)
(場所)
    東京会場 東京23区内 (詳細は追ってご案内します)
(お申し込み)
    
http://www.speed-change.co.jp/belief/

※初日の終了後に懇親会を開催します(参加費5,000円)




世界最高峰の実践的なセラピー理論&技術が学べます!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

---------------------------------------------------
  ◆『プロセラピスト養成講座 無料体験説明会(東京)』◆
---------------------------------------------------
●全日程とも、内容は同じです

【日時と場所】
 12月 8日(木) 19:00~21:00(場所:ちよだプラットフォームスクエア)
 12月23日(祝) 14:30~16:30(場所:ちよだプラットフォームスクエア)
  1月 9日(祝) 14:30~16:30(場所:ちよだプラットフォームスクエア)

【参加費】
   無料

詳細とお申し込みはコチラ
   
http://speed-change.co.jp/belief/therapist/




サイコセラピスト 棚田克彦