二十、 子供父さん『お祭りに行く』の巻 へび女編  
                           
 父さんが言いました。          
『今日も皆の好きなお祭りのお話をしようかな?みんな、  
 それでもいいかい?』          
 2人の子供は同時に返事しました。      
『うん、いいよ!』            
 そこで、父さんは話し始めました。      
 子供父さんの家のそばには、3か所の神社があった事は、
前に話したよね。中でも小学校の裏の神社は家からも近い事
もあって、一日に何回も、行ったことがあったよ。神社まで
の道のことを、参道と言うんだけど、その参道の両側に、出
店がぎっしりと並ぶんだ。          
 どんな店があるかと言うと、まずあるのが、綿菓子のお店、
大きな綿菓子を、一袋づつ包んであって、二つも一袋に入っ
ているのがあるんだ。その包みには、色々な漫画の絵が書い
てあって、楽しそうなんだ。他には、おなじみの、たこ焼屋
さん、焼そば屋さん、いかを丸ごと焼いた,いか焼き屋さんな
んてのもあったな。そこのお店には、いかの足だけを焼いた
下足焼き(これは、「げそ」焼と読みます。また、勉強にな
ったなー)なんてゆうのも、置いてあったよ。これはいかの
体よりも、安いんだ。砂糖を、火のついた、炭が入っている、
七厘の上に乗せた、小鍋で溶かし、それに重曹を入れてつく
る、カルメ焼き屋さん、なんてえのも、あったねぇ~。  
 遠くからでも、匂いで分かる、ベビーカステラ屋さんは、
みんな好きだったね。これはね、道路の上に、カステラを作
る機械が、置いてあってね。溶かした材料を、片方から入れ
ると、反対側から出来立ての、ベビーカステラが、出てくる
という、子供とうさんからしてみれば、夢みたいな、機械だ
ったのさ。だから買い終わっても、しばらくは、そこから離
れられずに、じーっと見ていたものさ。      
 でも、何と言っても、一番好きだったのが、べっこう飴屋
さんさ。溶かしたべっこう飴の入った、小さなお鍋を片手に
持ち、もう片方の手には、小さな棒を持って、冷たい鉄板の
上に、べっこう飴をたらして、小鹿や、てんとうむし、ちょ
うちょ、うさぎやりす、猫や狐なんかの形を書いて、それが
固まるとその形の飴が出来るのさ。だから、飴が固まる前に、
下の方にわりばしをくっつけると、なんときれいな、食べら
れるべっこう飴の、出来上がり。次々と出来る、動物や昆虫
の、飴をみてぼーっとしていることも、あったよ。  
 えっ!なんだって!食べ物屋さんばかりじゃないかっ、だ
って!あっはっはっ、ばれたか!子供父さんは、どうも食い
しん坊、だったのかもしれない。        
 お店の話しで、まず先に出てくるのが、食べ物のお店ばか
りだものね。他にも、食べ物のお店は、沢山あったけど、こ
の辺にして、食べ物のお店ではない、お店の話しをしよう。
そうだな、投げ輪に、射的、金魚すくい、何と言っても、と
ても思い出になっているのが、見世物小屋だな。見世物小屋
というのは、小屋の中に何かを飾ったり置いたりして、それ
を、お金を払って、見に行くものなんだ。      
 色々な出し物があった、例えば、「狼少年」や「大いたち」
「へび女」なんかなんだ。何が面白いって、入り口に座って、
案内している人の言葉、(この言葉の事を、口上と言うんだ
ぞ!またまた勉強になったな!)その口上が、とても子供と
うさんの、心に残っているんだ。良く覚えていないけれど、
こんなふうだったと思うよ、そうだな~。      
 狼少年の場合は・・・・・        
 「アフリカのジャングルでドイツのゲッペル博士によって
  発見された、この少年。なんと狼に育てられた、少年であ
  ります。夜に起きて昼間寝る。まるで、狼そっくりの生活
  を、しているのであります。生肉を食らい、遠吠えをする
  のはもちろんのこと、なんと手足を使った、四つ足で歩く
  のであります。」さーいらっしゃい、いらっしゃい!い
  ままで見たこともない珍しい姿であります。本邦初公開!
  さーいらっしゃい、いらっしゃい。なんてね。(なに、な
  んだって!本邦初公開が分らないだって?よしよし、それ
  では、教えてあげようね、「本邦初公開」と言うのは、日
  本では初めてという意味なんだよ。子供父さん物語は、本
  当に勉強になるんだなー。)        
 大いたちの時は・・・・・        
 「世にも珍しい!今世紀最大の発見!こんなの、見たこと
  無い!驚きの珍品!世界最大の大いたち!」    
  さー寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!今世紀最大の
  発見がたったの300円で見ることが出来る。見なきゃ
  そん!!大人300円子供150円で、世紀の発見があ
  なたの目の前に!ちょっと、そこゆくお兄さん!おねえ
  さん!大いたち、見ていかない?と、こんな具合さ。  
 (えっ何だって?今度は2つわからないだって?どこと、
  どこが、分らないんだい?えっ何々1つは「今世紀最大」
  もう一つは「驚きの珍品」だって?わかった分った。そ
  れでは、ご説明差し上げましょう。「今世紀最大」とは、
  年の数え方で、100年を1世紀として数える数え方の事
  で、19世紀とか20世紀とか言うんだ。その100年の間
  で一番大きな発見と言ういみさ。「驚きの珍品」とはね、
  珍しい品物で、皆が驚くと言う事だな。また勉強になっ
  たねー)              
 へび女の場合は・・・・・・        
 「親の因果が子に報い、可哀相なのはこの子でござい、産
  まれ出たるへび女、何でも丸呑みに致します。」・・。
  この後はあまり覚えていないんだ。(えっ何だって、ま
  た、分らない事があるのかい?なんだろうね?えっ「親
  の因果が子に報い」が分らないだって?これは、少し難
  しいんだけど、簡単に言うと、悪い事を親がすると、子
  供に悪い事が起きる時がある。見たいな事かもね。また、
  1つ利口になったね、)        
 なぜ覚えていないのか、だって!実はね、へび女について
は、子供父さんには、世にも恐ろしい体験が有るからなんだ。
どんな事かだって?本当に聞きたいかい?よし!じゃあ話し
てあげようかね。心を落ち着かせて聞位居て下さい。  
 あるお祭りの日、子供父さんは、いつものように、友達と
一緒に、お祭りに来ていたんだ。友達と、色々と遊んだ後、
すっかり、お金を使い果たしてしまい、それでもお祭りの中
を、うろうろしていたんだ。ちょうどその時、見世物小屋で
は、へび女がやっていて、子供父さんと友達は、見たくて仕
方がなかったんだ。            
 でも、もう、お金は無いから、ただで、見る方法は無いか、
考えていたんだ。(自分で考える事は大切だと学校の先生に
も聞いていたので、それを、実行していたんだな。子供父さ
んは、何て素直なんでしょうか?)        
 何とかして見れないものか、何回も考えました。子供父さ
ん達が、あきめるはずがありません。子供父さんは、持ち前
の探究心を活かして、小屋の回りを回って、なんとかならな
いか、考えてみたんだ。          
 すると、ちょうど小屋の裏側に良いところを発見したのさ。
テントで出来ている小屋の、屋根と壁のシートの、境目の所、
に、すきまがあるのを見つけたのさ。そこのちょうど真下に、
高い石でできた塀があってね、そこに乗ると子供父さんたち
の背が、すきまに届くんだな、これが。つまり、小屋の中を
のぞけるかもしれないんだ。子供父さん達の、喜んだ事と言
ったら、ありません。          
 もちろん、すぐにそこに上ると、そっと、屋根のシートを、
持ち上げ、恐る恐る、なかをのぞいて見たのさ。そこは、ち
ょうど、へび女の後ろの所で、その姿が良く見えました。へ
び女が、色々な物を、次々に飲み込んで、いきます。ひよこ、
生肉、そして、電球まで、飲み込んでしまいました。(これ
は、飴で出来ているので、ちっとも危なく無いことを後で大
人から教えてもらった。また、勉強になったなー。今日は勉
強のしすぎだね。何でも、し過ぎ健康に良くありません。注
意しましょう。)            
 へび女の、あまりの凄さに、子供父さん達は、「あっ!」
と驚きの声を、上げてしまいました。その声が、へび女に聞
かれて、しまったから、大変です、へび女は、さっと後ろを
振り返ると、子供父さん達をにらみ付け、「こらーっ!!」
と怒ったのです。その、恐ろしいこと、恐ろしいこと。  
 へび女に怒られた、子供父さん達は、壁から転がり落ちる
ように、降りました。そして、それぞれ一目散に駆けて家に
帰り、押し入れの、布団の中に、逃げ込んだのさ。そういう
事もあったよ。今日の話しはこれでお終い。    
                 
信くんが言いました。          
『へび女はおいかけてきたの?』        
父さんは言いました。          
『残念ながら、来なかったよ。』        
お姉ちゃんが言いました。          
『来る訳ないでしょ、まったく!』        
                 
   おやすみ なすびに キュウリに トマト。