真ん中が赤、周りが緑、
クリスマスカラーのやつです。
松嶋屋さん(市山流)の『連獅子』で特徴的なのは、
二畳台が2つ置かれるのではなく、3つ。
2つの台の感覚が二畳台よりやや狭めに置かれ、
その間に3つ目が置かれます。
こういうイメージで。
花道を登場する仔獅子、片岡千之助くん。
ここから、いったん花道を後ろ向きに猛スピードで下がっていきますよね。
獅子の毛は身長より長いですから、
下手をすると自分の脚で毛を踏んでしまうと転んでしまいます。
そのため安全な形としては、体の左右どちらかに毛をよせるというのがあります。
しかし、形の美しさを求めて、毛は自分の脚の間に。
一気に駆け抜ける千之助くんの仔獅子でした。
舞台には二畳台。
3つの台の中央(表彰台の金メダルポジション)に待ち構えるのは、
オーパ(大きなパパで「オーパ」と千之助くんが読んでいる)、
仁左衛門さんの親獅子。
駆け寄る千之助くんの仔獅子。
親獅子も二畳台から降り、舞台前方での舞。
そして、仔獅子が左の台へ、親獅子が右の台へと登ります。
千之助さんが左の台、仁左衛門さんが右の台へ上がり、
正面を見据えます。
そして、その間の台には、
なんと、中央の台には、
南座にいるはずの孝太郎さんがっ!
嘘です。
さすがに無理ですよね。
真面目にやります。
仁左衛門さん、千之助さんは、
さらに歩み寄り、同時に中央の台、
百獣の王、獅子の座へ。
仔獅子は親獅子に挑み、
親獅子は仔獅子を認めます。
そして、お互いに一段下がって、左右の台へ。
こ、これって、
まさか。。。
踏み台昇降?
す、すいません、真面目にやります。

そしていよいよ、毛振りへ。
これについてはちょっと言いたい。
『連獅子』の感想でよくあるパターン。
たとえば『連獅子』がお家の芸というべき、
中村屋さんだと(前回のシネマ歌舞伎の感想でも書きましたが)
「親獅子の毛振りと仔獅子の毛振りがピッタリとそろっていて感動した!」
と、なります。
それに対して今回の松嶋屋さん、片岡仁左衛門さん、片岡千之助くんの『連獅子』です。
ネット上では
「千之助くんは成長して元気いっぱいの毛振り。
仁左衛門さんよりスピードが速い。
仁左衛門さん、病み上がりだし、大丈夫なのか心配。」
のような感想もちらほらお見受けしました。
が、
まあ、ちょっと、聞いて下さんせ。
2011年の新橋演舞場でのパンフレットを取り出して参りました。
仁左衛門さんのインタビューを一部紹介しますよ。
「先日、お能の『石橋(しゃっきょう)』を拝見する機会がございましたが、
お能での親獅子は舞踊のように仔獅子のように暴れないのですね。
親獅子とはこうあるべきかもしれないと思いました。
今回どうやるかはいろいろ考えております。」
そして今回、2014年の歌舞伎座でのインタビューでは
「親獅子は仔獅子と同じように動くのではなく、ゆったりとした風情が必要です。
千之助にはその振りや形がどのような気持ちから生まれたかを考えて踊って欲しいと思います。」
とお答えになっています。
つまり、
毛振りがそろっていないんじゃなくて、
毛振りをそろえない『連獅子』なんです。
親獅子はゆっくり泰然と、仔獅子は速く激しく。
百獣の王の貫禄で雄大に舞う親獅子と、
内面からほとばしる勢いで荒ぶる仔獅子、
そのコントラストの『連獅子』です。
「仁左衛門さんの体調、体力の問題で、毛振りがそろわなかった」というのは
ちゃいまっせ~。
そして、最後に獅子の玉座(金メダルポジション)に親獅子の仁左衛門さん、
その手前に舞台の上に仔獅子の千之助さん。
両手を広げてピタリときまります。
(プチ情報:三年前の舞台写真と比べてみました。
三年前は千之助さんは立ったまま両手を広げていますが、
今回は膝をついた姿勢で最後にきまっていました。
背が伸びたのね~)
「ジワがくる」とはこういうことなんでしょうか
幕が引かれてから、しばらくどよめき、ざわめき、涙をすする声の歌舞伎座でした。
