歌舞伎座こけら落とし公演でも五月に上演されました、
坂東玉三郎さんと尾上菊之助さんの二人による
『京鹿子娘二人道成寺』
です。
編集に坂東玉三郎さんが加わり、
シネマ歌舞伎ならではのうれしいサプライズです。
「聞いたか、聞いたか?」
「聞いたぞ、聞いたぞ。」
「聞いたか、聞いたか?」
「聞いたぞ、聞いたぞ。」
登場する所化(お坊さん)は豪華です。
所化阿面坊 市川門之助さん
所化仙念坊 片岡亀蔵さん
所化妙念坊 坂東亀寿さん
所化喜観坊 市川猿弥さん
所化雲念坊 尾上松也
所化阿観坊 坂東薪車
を始め、総勢23名。芸達者な顔ぶれです。
恒例のお酒(
と不真面目な雰囲気のお坊さん達。
女人禁制のお寺ですが、何やらよい香りが近づいてくると
ウェルカムモードです。
花道から登場したのは白拍子の
道成寺で鐘の供養があると聞いてやってきます。
そして花道スッポンからは、白拍子ドッペルゲンガー花子、
白拍子花子パート2として坂東玉三郎さん、せり上がってきます。
菊之助さんの後に影のように寄り添い、
同じ振りで鐘を見上げます。
清姫が愛する安珍をかくまった道成寺の釣り鐘に恨みを抱いているのでした。
さて、玉サマは再びスッポンから引っ込みます。
寺の入り口には菊之助さんがGO。
「なにやら良い匂いが。愚僧が見て参ろう。」
と向かうのは市川門之助さん。
(9月24日お誕生日おめでとうございます。)
綺麗な
みな一斉に
「いよ~」
と驚きの声です。
みんなでゾロゾロと見に行きます。
そして花子ちゃんの綺麗な姿をみると
「いよ~」
と今度は喜びの声です。
今度はお坊さんだっていうのに下世話な話に。
門之助さん
「どのような女御であろうか?」
と聞くと意見が割れます。
亀蔵さん
「愚僧は
亀寿さん
「いやいや、白拍子ではござるまい。
坊さん集団の意見は真っ二つ。
「白拍子、白拍子。」
「生娘、生娘。」
お互いに言い合います。
白拍子とは、そもそも女性ながら
しかし芸をするだけでなく男性のお酒の相手もしていたようです。
そのため、職業として男性のお相手をする遊女、セクシーお姉さんズが「白拍子」、
別にそのことを職業とはしていない素人さんが「生娘」というとこでしょうか。
ちなみに、今をときめく檀蜜さんのブログ(アメブロ)もタイトルは「黒髪の白拍子。」ですね。所化のたむお坊は、間違いなく寺に入れますね。
皆で言い合っても仕方がない、聞いて参ろうということで、
またみんなでゾロゾロ。
「それにお渡りあるは白拍子であるか、生娘であるか。」
とえらい直接的な質問。
現代なら質問するだけでセクハラですよ~。
菊之助さん、堂々と
「われはこの辺りに住まいいたす白拍子にて候。」
と答えます。
所化坊主の半分、さっき白拍子だと言った人たちが、
「白拍子、白拍子」
と勝ち誇ったようにいいます。
ここでアップになるのが向かい合ってる亀蔵さんと亀寿さん、
ほら~白拍子であってただろ~
とばかりにほっぺた膨らませて口をとがらせてる亀蔵さん、
口をへの字にしてショボーン
としてるのは亀寿さん。
なに、この二人。可愛すぎる(おっさんなのに。。。。)。
小学生っぽい意地の張り合い。
「白拍子が何用あってこの
と聞くと、
「鐘の供養があると聞いて、ぜひ拝ませて欲しい」
と告げます。
ここからは、我らの問答(質問)に答えたら通してやろう、という展開に。
お待たせいたしました、ここでシネマ歌舞伎の
サプラーイズ
カメラは質問側、応答側と交互に切り替わります。
たとえば、
「柳は?」(カメラ:所化たち)
「みどり」(カメラ:菊之助さん)
「花は?」(カメラ:所化たち)
「くれない。」(カメラ:菊之助さん)
「して踊り子とは」(カメラ:所化たち)
「舞子なり」(カメラ:菊之助さん)
こんな感じです。
ところが、(どのセリフか忘れたので申し訳ないですが)
「ばんどくが愚痴は?」(カメラ:所化たち)
「文殊の知恵」(カメラ:玉三郎さん)
となります。
つまり、さっきまで菊之助さんだったのに、画面から一旦消えると玉三郎さん、
えっ、とおもっていたら、また菊之助さん。
リアル歌舞伎では絶対できない、シネマ歌舞伎ならではのイリュージョン。
二人の花子が入れ替わりました。
問答はあっさり言いくるめられる、情けない坊さん達。
相手の方が一枚上だと、道成寺に入れることにします。
まあ、こんな綺麗な女性ならウエルカム。
一応、男性の格好をしてもらえば、女人禁制の寺でもいいわけもたちます。
ちょうどここに烏帽子があるからかぶって。
ついでに烏帽子をかぶったら踊ってよとお願いする坊さん達。
自分たちの立場を利用してのパワーハラスメント。
セクハラ&パワハラのセ・パ両リーグ制覇というところですが、
花子さんにしてみれば、寺に入るのが重大目標ですから、
あっさりオッケーです。
準備の間に芸達者と言えば、そう市川猿弥さん。
「舞」の説明をしてくれます。
アメノウズメノミコトが岩戸の前で神様の前で踊りました。
「お客様は神様です。」
エピソード捏造からダジャレ攻勢で
「北海道はとまこまい。横浜名物シュウマイ、こりゃうまい。」
「きりきり巻くのはぜんまい。山菜料理もぜんまい。」
「私の頭はてんてこ舞い、きりきり舞い」
と紹介して、
「これにておしまい。」
所化さんたちも
「いよ~」
さあ、戻ってまいりました白拍子さんです。
最初は、金冠の舞。
舞台中央には菊之助さんの白拍子。
サプラーイズ・パート2
菊之助さんが前へ進んでくると、
ピタッと後ろから玉三郎さん登場。
美の体細胞分裂、花子が二人に増えました。
さて、ここからはたむおの感想は「きれいやな~」ということで。
さらっといきます。踊りはホントわからないので。
娘心の若々しい踊り、鞠をついてあそぶ少女二人、
廓の唄にあわせて色っぽくなっていく踊り、
花笠をもっての踊りには所化たちも参加して傘をもって踊ります。
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こんどはせつない系の歌詞になり、
男を思うしみじみな踊りで、
鈴太鼓や鞨鼓(かっこ)という胸につける太鼓での踊り、
「山尽くし」、「ただ頼め」などになります。
サプラーイズ・パート3
いったん引っ込んで、お着替え、お色直しタイム。
リアル歌舞伎ならば演奏を聞いてじいっと待っているだけですが、
これまでの踊りのダイジェストが流れます。
一人(二人)の女性の少女時代から大人の女になるまでを
振り返って一気に拝見です。
そして二人が出てくると、最初は美女美女二名様だったのですが、
だんだん表情が変わっていきます。
この写真の菊之助さん、かなりヘビっぽい。
舌がチロチロしそう。
だんだん蛇の本性が表われると、所化の坊さんたちは腰を抜かしちゃいます。
止めようとはするものの強行突破、
一気に鐘に近づくと鐘に駆け上がります。
鐘の上の二人の白拍子花子、実は大蛇の精がキッと睨んでの見得。
壮絶な女の想いが一つの形になりました。
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玉三郎さんは以前、『鷺娘(さぎむすめ)』は踊り納めされると
ホームページのコメントで書かれていましたし、
一人で『道成寺』を踊られることもないと宣言されております。
そういう意味では今回のシネマ歌舞伎は貴重です。
時間のある方は、劇場へどうぞ~。

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