「獅子身中の虫」っていうことわざ、
音が「しししんちゅうのむし」って、
「し」が連続するのでなんか可愛らしいです。
ことわざ辞典によると、
「獅子身中の虫、獅子を食らう」
という故事の一部らしいです。
獅子(しし)は想像上の生物で、
たてがみのあるライオンとはちがいますが、
ものすごく強い生物であることにかわりはありません。
しかし、唯一の弱点がありました。
獅子身中の虫、つまり獅子の体の中にいる寄生虫が
だんだん寄生のレベルではすまなくなって、
最後には獅子の肉体まで食べてしまう、
というこわ~い話。これが、
「獅子身中の虫、獅子を食らう」
ということです。
「獅子身中の虫」という言葉が出てくる場面を紹介します。
◆『熊谷陣屋』
平氏と源氏が戦いを始める前の話です。
平宗清(たいらのむねきよ)は、
源義経、その父の義朝(よしとも)と母の常盤(ときわ)、
兄の頼朝(よりとも)の一家四人で凍え死にしそうになっていたところを
助けてあげました。
その後、平氏と源氏が戦を始めて、
平氏は源氏に滅ぼされてしまいます。
宗清は、(名前を弥陀六(みだろく)と変えています)
「平家のために獅子身中の虫とはわが事。」
と嘆くのは、
「平家を滅ぼしたのは、平家の私が義経たちを助けたからだ…」
ということだったんですね。
◆『仮名手本忠臣蔵』の七段目、祇園一力茶屋の場
大星由良之介(おおぼしゆらのすけ)の家臣、
斧九太夫(おのくだゆう)さん。
この人は相手方、高師直(こうのもろなお)のスパイみたいなことやって、
もし大星さん達が兵を挙げようとしたら
そのことを密告しようとしてます。
床の下にこっそり隠れて、大星さん宛の手紙を盗み見ているのが
ばれたときのこと。大星さんミスター斧をつかまえて、
「獅子身中の虫とはおのれがこと」
つまり、
「この裏切りもの!!わが主君から恩恵を受けたのに
敵の高師直の犬になりやがって!」
といってるんですね。
さて今度は「獅子」そのものの話も。
「石橋(しゃっきょう)もの」というジャンルで、
『連獅子』、『鏡獅子』、『勢獅子』とか、
獅子がでてくるものがあります。
「石橋」はそのまんまで、石の橋、「いしばし」のこと。
すんごく長く、すんごく細くてしかも、
石には苔がついているという、
いやがらせとしか思えない橋があるんですが、
修行僧の修行の場所。
日本三大名所の一つ「天橋立」(あまのはしだて)を
イメージしてください。
あたりには文殊菩薩(もんじゅぼさつ)がまつられてます。
「三人寄れば文殊の知恵」の文殊さんですね(今日はことわざ多いなぁ)。
そこから見える「絶景かな~」が天橋立の風景、
天まで続くくら~いの長い、細い、
くねくね曲がった橋のようです。
そして、その石橋を進んでいって、
天に近づいていく途中にいるのが、
伝説上の生物の「獅子」です。
ということで、体内の寄生虫が暴れだすのを
なんとしてでも獅子は防がなければなりません。
そのためのアイテムは牡丹(ぼたん)。
百獣の王の「獅子」ですからそれにあうのはやはり、
百花の王である「牡丹」ですね。
日本絵画や彫刻のモチーフとか、任侠映画のヤクザの入れ墨とか、
この組み合わせ多いですよね。
その牡丹についている露のしずくが獅子の身に
ポタリと落ちると獅子の体内の虫が暴れるのが
抑えられます。
そのため、獅子は牡丹の元に近づいていって、
体をふって牡丹の幹や枝をゆらし、
そこから落ちてくる露のシャワーを浴びてることになります。
これでパワー充電、もはや弱点のない
無敵モードになるわけですね。
さらに、子供を厳しく育てるときの様子で
「獅子はわが子を千尋の谷に突き落とす」
という(今日は本当にことわざ多いなぁ)エッセンスを
追加したのが、
舞踊『連獅子』
です。親獅子が子獅子を谷底に突き落とし、
子獅子も再び父親のもとへと這い登っていく。
そして、両者が毛振りをみせて、
二匹の獅子としてこれ以上ない立派な姿を見せる。
感動です。




カブとも(歌舞伎友達)の輪を広げていきたいので、ポチッと押してくださいませ。