大阪の国立文楽劇場。
やや下り坂、舞台の前に近づくほど傾斜になっています。
見やすくていいなぁ。
地面(のライン)に、人形の足先の位置と観客の目の高さが
そろっていないといけないからでしょうか?
ここで注意。
足元にペットボトルや丸い水筒を置いてしまい、
万が一倒れたりするとコロコロと転がって悲劇が起こります。
悲劇を目撃したことあります。
初めて観たときは人形よりも人形遣いさんが気になってしまったのですが、
今回は文楽2回目だったのでそれほど気になりませんでした。
実際のおなじみの忠臣蔵事件の設定を
文楽や歌舞伎バージョンにしたのがこの
『仮名手本忠臣蔵』
です。
時代、人の名前などの設定が少しずつ変えてあります。時代は足利氏の時代。
が、インターネットどころか、新聞、テレビない当時の人にも、
「実際に起こった事件ですよ」とわかるように仕掛けがしてあります。
ちなみに『元禄忠臣蔵』は設定そのままバージョン。
歌舞伎の場合は舞台のナレーションの役割は、
演奏(三味線など)にあわせて太夫さん(唄)が担当します。
そして舞台上の登場人物の動きとセリフは役者さんがやりますね。
文楽、人形浄瑠璃の場合は人形は動けませんし、しゃべれません。
そこで人形遣い(にんぎょうつかい)の方が動かして、
セリフは太夫さんが語ります。
さて、感想レポートです。まいりましょう。
大序(一段目),二段目
最初のところ、はじめて観ました。「ザ・様式美」ですよ。かっこいい。
幕が上がり、「人形遣いさん(という人間)が人形をもって立っている」の風景。
人形は静止、ただの人形です。
しかし、三味線の音と太夫さんの声で一人ひとりの人物の説明があると、
それにあわせて人形が動き出し、
「人形に魂が吹き込まれ、人形遣いさんは風景に溶け込んでいきます。
こうしてこれから始まる壮大な物語に観客は少しずつ引き込まれていきます。」
すいません、いま、かっこいいこと書きましたが、イヤホンガイド解説の受け売りです。
まあ、でもそんな感じです。
ほんまかっこいい。
「嘉肴(かこう)ありといへども食せざればその味をしらずとは、…」という
ことわざが冒頭から紹介されます。
武士がいくら武芸をみがいても、戦がなければただの人です。
(もちろん足利氏の時代には戦はあるのですが、リアル設定の江戸、元禄時代には戦はありません)
しかし、これからのお話では…、という伏線。
他にも「人は一代、名は末代」という言葉も紹介され、
お家は取り潰しになっても、その名声は後々まで語り継がれるであろうという、
赤穂浪士の事件を匂わせています。
タイムマシンにのって「21世紀も語り継がれてるよ~」と教えてあげたい。
吉良上野介(きらこうずけのすけ)にあたる役は高師直(こうのもろなお)さん。
この人パワフルエロじじいです。役職は今の官房長官くらい?
浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)は塩冶判官(えんやはんがん)さん(官房長官補佐)ですが、
その塩冶判官さんの妻である顔世御前(かおよごぜん)さんに、
夫がいない隙にラブレターを渡す(セクハラ)。
こんなもん受け取れないわと投げ返すと
夫の仕事(将軍家の接待)がうまくいくかどうかは、
「すべてワシの匙かげんや~」(注 関西弁ではありません)
と弱みにつけこみます(パワハラ)。
う~ん、憎たらしい。
そこをとめるのが若狭助(わかさのすけ、もう1人の官房長官補佐)です。
「なんやこいつエエかっこしよって~」(注 関西弁ではありません)
と思った師直さん、こいついじめたるねん、と今度は若狭助さんを攻撃対象にロックオンです。
さんざん悪口を言いまくり、思わず若狭助が刀に手をかけるのですが、
たまたまここは神社の境内、事件はタブー。
「神様の前で何するつもりじゃ~」
といって、立ち去っていきます。
う~ん、憎たらしい(2回目)。
いったん家にもどった若狭頭、怒り心頭、
「こんど会ったらタマとったるねん」(注 関西弁ではありません)
すると家来の加古川本蔵さん、
「わかった、やれやれ、やっちまえ」
と後押し。近くにあった松の枝を刀でバッサリ。
末永く続くシンボルの松をズバッと切るなんて。
(たむお「あんたかっこええわ~。」)
若狭助はやったるど~、と思って寝室に下がると、
本蔵さん、
「高師直のとこいくぞ~。馬を出せ~」
といって、家来をつれて館からダッシュ。
あれ?手のひら返し?裏切り?密告?
10秒前の(たむお「あんたかっこええわ~。」)はどうしてくれんねん~。
う~ん、憎たらしい(3回目)。
接待の会場にいるのは高師直(こうのもろなお)。
ここに若狭助の家来の本蔵が登場です。
さっきの場面、観客は見てますが知らないジジイ師直は、
若狭助の命令で「ワシの命とりに来たんか~」と睨みかえしますが、
本蔵さん、
「すんません、うちのアホな殿さん、世間の常識っちゅうものが
わかってませんさかいに。ご迷惑かけまして~」 (注 関西弁ではありません)
と言って、袖の下からワイロの目録を渡します。
(袖の下からの「袖の下」、初めて見た。)
密告ではなくワイロかよ~。
ジジイもワイロもらい慣れしているのか、
「いやいや、本蔵君。別に受け取りたいわけちゃいますけど、
せっかくの申し出をことわったら、断ることが失礼かもしれんので、
今日は受け取るんやで。しかしまあ、若狭助も器用なヤツやから、
今回の仕事もうまくいくんちゃうかな。ガハハハハ」 (注 関西弁ではありません)
女も好きだけどお金も好き。エロジジイっぷりもここまでくれば素敵です。
お金のためならなんぼでも頭さげまっせ~。頭下げんのはタダやしってなもんです。
さあ、若狭助のロックオンは解除です。
さあ、城内にて若狭頭「タマとったらぁ~」と意気込んでいるのですが、
ジジイのほうは、
「この前はホンマに悪かった。ひどいこと言ってしもうたな。すんまへん。すんまへん。」
と平謝りです。
その後やってきたのは、塩冶判官さんと家来の早野勘平さん。
お城に入りますが、勘平を呼び止めるのは腰元のおかるです。
おかるの方は、塩冶判官の奥様の顔世御前さんのお使いで、
手紙を届けにやってきています。
家来と腰元との恋愛はタブー(今なら職場恋愛って普通にありそうなもんですが)。
「ゆっくりもっていって」と奥様に言われたいのに、
勘平に会いたいので急いできちゃったおかる、
そして、声をかけられておもわずふらふらと行ってしまう勘平。
ラブラブなら仕方ないとも思うんですが、
これがたいへんなことになっちゃいます。
長くなってきたので、続きは次回にまわします。
いやぁ、文楽いいわぁ。
- [DVD] 人形浄瑠璃文楽名演集 通し狂言 仮名手本忠臣蔵 Vol.1

- ¥5,569
- 楽天
歌舞伎の輪を広げていきたいので、ポチッと押してくださいませ。

