太陽の破片 尾崎豊
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早くに仕事を切り上げ、書斎「抱雪庵」の整理をしていた。
ダンボール箱の隅から使いきった僕の手帳が出てきたんだ。
手帳。
僕は最近は持ち歩くことがない。でもあのとき。そう、詩を描くのが嬉しくって、考えることが楽しみになったころ。いつも手帳を持ち歩いていた。なにか自分が詩人になったような気がしたからだろう。
ドキドキしながら、もう7年も前の古ぼけた手帳を読み返した。
「見失った愛はがらんどうに良く響く」
むぅ。こんなこと書いていたのか。そうだなぁ。愛を知りたくって愛を訴えて負けては戦っていたものなぁ。
「さよならと手を振ったのは取り巻く悲しみを払うため」
あの人は僕を残して海外にいってしまった。空港で思い切り泣きながら手を振った時に書いたんだな。紙がなみだの跡を残している。
「海が慕情に流す血は夕陽となりて消えてゆく」
こんなこと書いたかなぁ。一人で海にいて、夕日を見てセンチメンタルだったときだね。
「愛は分け合うと増えるものなんだね。」
愛は想像する力。それに気がついたときが嬉しかった。だから愛は無限だって思った。それは僕の歓喜であって、最高の感動だった。そんな気持ちで書いたんだ。
「飛天の空」
悲しみにたもとがあれば
袖を通した貴方のことを
いつしか裸にしてみせる
悲しみに歩みがあるなら
追われさ迷う心のキズを
連れて一緒に逃げてゆく
ついておいでよ遠くまで
悲しみが届かない場所へ
あおいだ空を持ち上げて
ほんとの青を追いかけて
その悲しみを飛天の空で
見下ろしたなら小さいよ
見下ろしたなら儚いよ
悲しみさえも恋しいよ
うんうん。これは覚えている。失恋した女性の友達の肩を抱きながら、一緒に泣いた日。何もしてあげられずに僕はこの手帳を出して彼女の横で書いていた。彼女には見せなかったけれどね。
「語り部」
そこだけにしか無いものを
ここだけにしか無いものを
いまだけにしか無いものを
きみだけにしか無いものを
包み込んで育てていこうよ
みつけなければ意味が無い
さがさなければ意味が無い
しんじなければ意味が無い
つたえなければ意味が無い
見えなくても探していよう
届かなくても感じるものを
否定されても感じるものを
自分のものと感じるものを
こころの中に感じるものを
信じつづけて守っていこう
それを守った人々がいたよ
命を賭しての人々がいたよ
全てを失った人々がいたよ
愛にあふれた人々がいたよ
その人達は語り部となった
非難中傷される詩の世界。僕は迷っていたけれど、僕は僕の道を見つけたんだ。だから何があっても、どんな困難にも立ち向かおうと不退転になっていた。愛を綴ることを人生としたんだ。そんな自分を自分で一生懸命に励ましていたんだ。こうしてね。
そして僕は然別公設キャンプ場で最後のページを書いたことを思い出す。
降るような星空。森林から野生の鹿が僕を望んでいた。川は流れ、焚き火の炎が僕を包み込んでいた。この世界はひとつ。僕もすべてがつながっている。感動で涙で一人むせいでいた。
星よ。川よ。炎よ。ここに命を与えて!
僕は焚き火の炎に照らして手帳の最後のページを書いた。僕はこのとき、この手帳を書き終えて詩人になったんだ。「つながり」それが僕の人生の羅針盤だと決めたんだ。その刹那。。。
北海道の
清流の
聖天の
森林の
炎の
すべてのカムイ達が僕を受け入れ同体になっていたんだ。もう、書いている字体さえ見えなくなっていたことを思い出す。これから続く僕の使命のため、僕は「つながり」という言葉で自分をはげましていた。僕が生まれてきた理由がはっきりと認識できた瞬間だった。
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「つ な が り」
野を駈ける馬でさえ
ふるさとをかえりみる
立ち止まることを知る
あなたの瞳の向こう側
そこにある悲しみに
辿りつきたいと思う
流れる川と満天の光り
焚きつける温もりに
君よいま立ち止まって
なにも欲しがらない人
愛と悲しみを背負う肩
その身をいとわないで
愛はこの川のように流れ
いまここにある悲しみは
遠く未来へ辿りつく
あなたの頬をこの胸へ
瞳の向こうの悲しみを
僕の身体に流しこんで
森よ 川よ 炎よ
ここに命を与えて
静かにしずかに
立ち止まるつながりへ
2002・07・24 TAMON


