僕は流浪(るろう)の旅人である。
少なくとも男性には「流浪癖」がある人がいる。そして「流浪」という言葉に憧れている人も多いのではないだろうか。
北海道の夏。大きな荷物を持って、自転車で、バイクで、徒歩で、たくさんの人々があてもない旅に訪れる。そんな方々にキャンプ途中で出会い、話し込むことも多い。彼らの目的を聞いて驚くのは、
皆一様に「自分を探すために北海道の旅を選んだ」という。
学校を休学した人もいた。仕事を辞めて来た人も。家族と別れた人。行き先を探している人。
僕は僕で、さほどそこまでは意識してはいないのだが、少なくとも日常に発見することが難しい「自分」に出会いたいから旅をする。
となれば、どちらも似たような感慨をもった旅人なのかもしれない。だから、そんな彼らとの出会いは嬉しいし、いつも人生や哲学の話になったりもする。
ここで「流浪」について改めて勉強することにした。
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るろう-しゃ ―らう― 2【流浪者】
さまよい歩いている人。さすらいびと。
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さまよ・う ―まよふ 3 【〈彷徨〉う】
〔「吟(さまよ)ふ」と同源か〕
(1)当てもなく、あるいは目指す所が見つからずにあちこち歩き回る。迷い歩く。さすらう。
「肉親を求めて焼け野原を―・う」「修羅の街(ちまた)に―・ふ/高橋阿伝夜叉譚(魯文)」
(2)一定の場所にとどまらず、行きつ戻りつする。
「生死の境を―・う」「道子は声も―・ふやふに/婦系図(鏡花)」
(3)心や考えが決まらず迷う。思い迷う。落ち着かない。
「色めかしう、―・ふ心さへそひて/源氏(真木柱)」
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さまよ・う【▽吟ふ/〈呻吟〉ふ】
悲しみ嘆く。呻吟(しんぎん)する。
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しんぎん【▼呻吟】(名)スル
苦しみうめくこと。
「句作に―する」「虐政のもとに―して/慨世士伝(逍遥)」
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(※印三省堂提供「大辞林 第二版」より)
流浪の旅人を国語辞典で調べてみた内容をまとめて見ると、次のようになるのではないだろうか。
「流浪の旅人とは彷徨い歩く人々であり、心の方途が未だ定まらず思い迷い、嘆き悲しみ、その苦しみにうめいている。」のだ。
僕は今日も日本海の雄大な太陽が傾きを見せる中で考えていた。バイクや自転車に載せた大きな荷物よりもさらに重い心の荷物を抱えながら孤独に独り「旅」を続ける人たちのことを。
恋に破れたのかい。
仕事が合わなかったの。
持った夢が砕けたのかい。
何処かに逃げたかったかい。
思うようには、ならなかったの。
大丈夫だよ。僕だってきっと同じさ。
きっとね自分が信じた自分が見つかる。
人はいつもそうやって生きていくものなんだ。
心が轟(とどろ)く「何か」を探す人々は、きっと今も何処か大自然の中でこの星空を見上げていることだろう。
苦しみに嘆き、しかし遠くを見つめながら、ゆっくりと立ち上がろうとしている。そう、この広大で優しい北海道の懐に抱かれながら。
嗚呼、流離(さすらい)の旅人たちよ。生きることのすべてを人の悲しみのまことを再生の時に託す如くに。不凍の森のカムイ達よ凍てついた心を暖めよ。流浪の孤独なるものを。。。
幸福のコードを織り込んだ作品です。声に出して音楽と読むと効果があがります。オーケストラの雄大なBGMでお楽しみくださいね。
音楽BGM
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「流浪の旅人」
言葉が凍えて消える道
マイナスの空に弾けて
君の顔が壊れてゆくよ
不凍の森のカムイ達よ
我をいま見おろし給へ
雪原を歩む流離い人を
大きな凍裂を響かせて
うつろなひとに覚醒を
北の空へいま導き給へ
帰る場所を失った者よ
北を目指して歩けよと
幻想を求めんがためと
白銀に征服された世界よ
ここにも命は生きている
遥かな春を待っているよ
涙が凍てつくほどに
身体が火照いる幻よ
吐く息をも轟かせよ
生きることのすべてを
人の悲しみのまことを
再生の時に託す如くに
不凍の森のカムイ達よ
凍てついた心を暖めよ
流浪の孤独なるものを
松尾多聞
※【カムイ】アイヌ語で神格を有する高位の霊的存在のこと。大自然に生きた彼らは、全ての恵みをそれぞれにカムイとした。それは全てが愛だとの認識であった。天然記念物シマフクロウは「コタンクルカムイ」村の神。
※【凍裂】(とうれつ)マイナス30度を下回る気温になると森林で生育する樹木の水分が凍結膨張して、大音響で裂ける。その音は数十キロにも届くすさまじいものである。
※凍える=こごえる
札幌はずいぶん秋めいてきました。虫が鳴いて月が映えています。とても良い季節になりました。みなさんの所はいかがですか?
残暑も納まり、涼しい夜を過ごしていますか?では、今日はこのへんで。じゃね。バイバイ。多聞でした。
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