紅白歌合戦に中森明菜が出るとか出ないとかが話題になり始めた昨年の暮れ頃。


歌手としての状態も、健康状態、精神状態、どれをとっても明らかに良さそうではない、中森明菜を、なぜ今頃引っ張り出そうとするのか、とっても疑問でした。


ベストアルバムがなぜか異常に売れてるところに目をつけた、何かの力がアンダーグラウンドでうごめいたことが原因でしょう。


NHKもそれに便乗して、紅白歌合戦に出場することを前提に密着取材をして、今年になったらNHKスペシャルで復帰特番を組んでいたし。


紅白での歌唱は、事前収録していたものだったとかも言われていますが、それにしても悲惨なデキでした。

声量も、エネルギー感も、枯れ果てていました。

あれを見てポジティブな評価をしたのは、関係者とコアなファンくらいじゃないでしょうか。


このブログでは、今まで基本的に中森明菜を絶賛してきています。

とは言っても、よく見たらアルバム「不思議」とその関係のパフォーマンスを絶賛してるだけですね。

忘れてました。

実は他のオリジナルアルバムも、けっこう優れているものが多くて好きなんですよ。


「不思議」がダントツだけれど、それ以外にも「Possibility」「Bitter And Sweet」「D404ME」「CRIMSON」なども、強力な制作陣と高い歌唱力で、なかなかの内容です。


歌謡曲の歌手の域ではありません、明らかに。


シングルでも、ミ・アモーレとかDesire などは、彼女の歌手としてのピークがそこにあったと言っても過言ではないほどの、インパクトある歌唱を見せています。

自己プロデュース力も高かったし。


それが狂い始めたのはいつごろからだったか。


それが徐々に、というか急激に、低下していったのは、やはり近藤真彦とのアレが影響していたのは確かだと思います。


クリエイティブというものに向かう力が、明らかに落ちて行った。


その後は、オリジナルでのリリースは数えるほどで、むしろセールスが上がり、話題に上ったのは、「歌姫」と題されるカバー集です。


自分はもともとオリジナル信仰が強く、カバーというものが苦手というかまったく好まないので、この歌姫シリーズにはまったく興味がありませんでした。

創造、という言葉から遠い行為だと思っているし。


だから彼女によるカバーってもんが、どの程度のものなのかまったく知らずにいましたが、数年前、たまたまこれもNHKスペシャルで、中森明菜のカバー特集がオンエアされたので、見ました。


どの歌も、まったく心に響いてきません。

明らかに彼女の歌のパワーが落ちている。


結果、オリジナルの歌詞とメロディを、歌唱力も声量も落ちている彼女が、ただなぞっているだけにしか、聴こえてこない。

曲が変わっても、曲調も、ダイナミズムも、一本調子で、同じ印象しか残さない。


中森明菜の出がらしが、その小さくなってしまったキャパシティで、中森明菜の幻影を見ながら歌っているだけ、というのは言い過ぎにしても、曲を、自分の歌で新たな次元に昇華させようというエネルギーはありません。


中森明菜という歌うことが好きな人が歌ってるカラオケ、ですね。


煮込んで、だしを絞り取りつくした名古屋コーチンを持ってきて、ほら高級名古屋コーチンの地鶏だよ、おいしいよ、と言われているような感じです。


正直、なぜこれが売れているのか、まったくわかりません。


今回のNHKスペシャル、一応録画したので、ざっと見ましたが、良かったのはやはり全盛期のミ・アモーレなどの記録映像部分だけ。


それ以外の、特に最近のインタビューや歌唱や彼女の姿は、ここまで自分を絞り切らなくていいんじゃないかと思わざるを得ない、痛々しいものだった。


自分の意思だかなんだかわからないものに囚われ、エネルギーを吸い取られて続けている。


それは他人の欲望や業界というシステムかもしれないし、自分の中にある何かへの渇望感なのかもしれない。

それとも、自分に当てられる光が忘れられないのか。


いずれにしても、早く解き放たれてもらいたい、そう思いました。