昨年の新刊本ではありませんが、久々に脳みそが揺さぶられる本に出会いました。

伊藤計劃 「虐殺器官」 。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)/伊藤 計劃
¥756
Amazon.co.jp

タイトルがちょっと不気味だし、描写にも気持ち悪い箇所が少し(いや、大いに)ありますが、これほどまでに凝縮度とスピード感のある傑作だったとは。

伊藤計劃は、ジャンル的にはSF作家ですが、すでに2009年に34歳で亡くなっています。
彼が残した長編は2作しかありません。
そのひとつ、彼の長編デビュー作がこれです。
ゼロ年代の最高傑作SFという人もいます。

SFと言っても、まったく荒唐無稽な時代や背景ベースで成り立つものではなく、現代の延長線として読める近未来もの。
ただドンパチやってストーリーを追いかけるだけのエンタテイメントではなく、ある種、哲学的で思索的な側面も持つミステリー仕立て。

これだけ大胆な仮説と架空テクノロジーをベースに組み立てられた小説にしては、実に精緻かつ論理的に描き込まれ、いかにも実現しそうなリアルな舞台感。
テクノロジーの背景となる知識がなければ描けないし、知識があるだけで構成力と筆力がなければ、リアリティある描写はできない。

まあこれはありえんだろう、と思うようなテクノロジーでも、いかにも実現されそうに描いてしまう。

そして、これだけの構成と情報量と想像力を1冊の本にまとめあげたということ。
少しでも詰めが甘くなると緩い構成になって、上下巻などに分かれがち。
それを1冊にまとめたわけなので、その密度はやはり濃い。
これがこの小説の醍醐味でしょう。

すごい本は最後のページを読み終えた後、なんとなく放心状態に陥ります。
次の本を読み始めるのにしばらく時間がかかります。
その世界観の余韻に浸っていたいから。

これほど想像力豊かな物語をこれだけリアルに描き込める。
天才のあまりにも惜しまれる急逝。