カナダのモントリール在住のミュージシャンDanny Provencherのソロ・プロジェクトである、 Under Electric Light の1stアルバム、 "Waiting For The Rain" 。

ベッドルーム・シューゲイズ。
彼は完ぺき主義者だそうで、そういう人に宅録やらせたら、通常は作業に終わりってものがやってきませんね。
細かいところにこだわって作り込んで一応の納得を見たら、今度は全体のバランスが気になってそこを調正する。
するとまたその調整で変わった細部が気になり始め、やり直す。
予想外にいい音が見つかってそれを加えると、それでまた全体の構成が気になり始め、やり直す。
その繰り返し。
やはり、今回のプロジェクトもリリースまでにけっこうな時間がかかったようです。
なんと10年越しの制作とか。
多重録音で、シンセの代わりに一部シューゲイザー的ノイズギターを入れて好きな音楽を創りました、という雰囲気がプンプン。
良くも悪くも、完ぺき主義者がひとりで創った音楽であることが個性でしょうか。
隅から隅まで、破たんがないサウンドプロダクション。
音のひとつひとつが磨きに磨かれ、とてもバランスが取れてます。
ギターの音も、シューゲイザー的といっても、ノイズはどこまでも滑らかに、突出はしない。
ドラムスもベースもキーボードも、どの楽器も強く自己主張することがなく、あくまでもパーツに徹し、全体感に寄与することだけを考える。
メロディもキャッチーできれいで、曲による出来不出来もなく、全体的にとても質感が高い。
だからこそ、ここまで流麗で、滑らかな、シューゲイザーができあがったんでしょうね。
しかしその裏腹に、アルバム全体でのメリハリが弱くなって、強烈なオリジナリティには欠ける気がします。メロディも構成も異なった曲たちなんだけれど、どれもまとまり方のイメージが似てしまった。
バランスを中心に創り上げられたサウンドスケープ。
その細部までこだわったバランス感覚は、ジャケットプロダクションまで及んでいて、それはまあキレイな青空と雲の写真なんですが、表面だけじゃなく、見開き部分やCDレーベルまでつながったアートワーク。
ケース自体、日本盤なんでかっちりと創ってあるせいもありますが、ほれぼれするデキです。
音楽性はまったく違いますが、Of Montreal というミュージシャンがいます。
彼も、自分の頭の中にある音楽をカタチにしたくて、打ち込みも含め、マルチプレーヤーとしての才能を発揮しながらその特異な音楽を創る、素晴らしいミュージシャン。
最新作では、ついに打ち込みをやめて、リズムセクションの中心を担うドラムスだけはプロのミュージシャンを起用しました。
自分の創ったベーシックトラックの打ち込みを生のドラムスに差し替える。
そうやって創られた音楽は、従来の作品よりもダイナミズムに溢れ、エネルギー感、躍動感が大幅にアップました。
すると他の楽器パートまで生き生きして聴こえるから不思議です。
Under Erectric Light についても、このバランス感覚がもたらす枠にはまった感を打ち破り、更なるスケール感を得るためにも、リズムトラックの淡々とした打ち込み音だけはなんとかして欲しいものだと思うんですが。