魔性の、というのは適当でないかもしれませんね。
でなければ、その魅力に惹きつけられて抜けだすことができない音楽。

一般にはあまりその存在を知られていないミュージシャンズ・ミュージシャン。
Girls、Andrew Bird、Morning Benders、Walkmenといった同時代のミュージシャンたちによるカヴァーが後を絶たない。

カリフォルニアをベースとするシンガーソングライターの Cass McCombs
彼の5作目となる "Wit's End"
$ノスタルジックなノイズたち

強烈な魅力を放つ音楽。
その魅力に引きずり込まれる音楽。

たぶん、誰もがそう思うわけではないでしょう。

一見、とても暗く地味な印象があります。
特に軽く聴き流すような聴き方をすると、この音楽の雰囲気どうもイヤだな、になるかもしれませんね。

しかし、音楽に向き合うように耳を澄ますと、ここには魔性のメロディと声と、極限までそぎ落としながらも強烈なサウンドスケープを形作る音があることがわかります。

リラックスして楽しむよりも、向き合って感じ取る音楽。

声もメロディもサウンドもたぶん歌詞においても、彼の研ぎ澄まされた感性と強烈な自我が直接形になったような、圧倒的な磁力を持っているような気がします。
五感の処理能力をすべて聴覚だけに集中せざるを得ないほどの、吸引力。

一度惹きつけられたら、そこから身を剥がすのが困難ですね。
何度も吸い寄せられるように聴いてしまう。



歌がゆっくりと終わり、音だけが散漫に続いていくラスト。なんともやるせない時間。


Radiohead の新作や James Blake などと同等以上に、圧倒される存在感。

クリアな歌声とピュアな楽器の音がもたらす透明感とデカダンス。
そんな相反する世界を、小手先に頼らない実にシンプルな構成だけで創れる異能。

世の中には、まだまだ凄いミュージシャンがたくさんいるのだと、驚くと同時に興奮を禁じ得ません。