3位 Massive Attack "Heligoland"

「不穏」という名のサウンドスケープを創らせたら、この人たちの右に出るものはいないでしょう。
安っぽいホラー映画のサントラなど目じゃない。
アルバム全体から漂ってくる不穏な空気。
その空気感が、上質なサウンドプロダクションで描かれている。
なんという質感の音だろう。
ここまでサウンドスケープにこだわり、ひとつひとつの音のテクスチャにこだわった音楽は、そうそうないです。
すごい。
そして地底で荒れ狂っているマグマの地熱を取り出したようなエネルギーの内包感。
そのエネルギーで滑らかで緻密な動きを繰り返す精密機械のような音楽。
ただ精神状態のいい時にはすげえ、と思って聴けますが、気持ちが不安定な時は聴かない方がいいでしょうね、これは。
2位 Vampire Weekend "Contra"

全てが新しい。
なみはずれたポップネスだけでなく、音の出し方も、組み立ても、ボーカルも。
持続音をほとんど使っていません。楽器から出るシャープな音の断片だけを組み合わせてる。
シャープな断片と言っても決してトゲトゲしくはなく、微妙にエッジを丸めた音にしていて、それが絶妙。
エズラのボーカルは、ロックのボーカルフォーマットとは程遠いところに来てしまっている。
ひたすら明るい輝きに満ちた音楽。
以前のレビューに書きましたが、障害にぶつかった時、今までのロックはそれを強い力で破壊して先に進もうとしていた。
しかしヴァンパイアは、軽々とそれを飛び越えることで乗り越えて行く。
圧倒的な肯定性と方法論の新しさ。
すごい。
1位 Arcade Fire "The Suburbs"

なんともスゴいヤツ。
性格もいいし、容姿も淡麗、頭脳明晰。
以前はそれらが鼻につくこともあったが、本人も出過ぎないように意識し、他の要素のレベルも上がり、とてもバランスが高次元に取れてる。
面白い遊びにも長けている。
それだけの存在でありながら、不思議と劣等感にさいなまれることもない。
この人と友人でいると、一生が有意義だろうと思わせる。
人によってはまるくなってちょっと面白みに欠けてきたんじゃない、ともいうが、なになに、丸くなっても、その丸の大きさがどんどんデカくなってるのよ。
そんな刺激に満ちた包容力のある友人のようなロック。それがThe Suburbs。
さんざんレビューで絶賛してきたので、これ以上書きませんが、とにかく聴くたびにエネルギーを充電してもらい、喜びに溢れます。
こうして1~3位を眺めて見ると、どれも過剰なほどに圧倒的な音楽であることが実感できます。
4位以下との差はこのあたりにあるのでしょうね。
サッカーで言えば、素晴らしい才能に恵まれた選手がワールドクラスのクラブで活躍するためには、その恵まれた才能を生かすような努力ができるかどうか。
常に対象であるサッカーに真摯な態度で臨み、できる限りの努力をし、最高のパフォーマンスを発揮できる環境に自分を置き続ける。
そして世界の誰もをうならせるプレーをする。
音楽も同じことだと思います。
才能にあふれたミュージシャンが音楽に真摯に向き合い、最高の作品を創りだすためのパフォーマンスをいかに怠らずにいられるか。
そこには、自分が目指すものへの誠実さ、真摯さが絶対に必要なんだろうと思います。
今回、ベスト10に選んだアルバムのミュージシャンは、みんなそれをやっている。
ところで、Arcade Fire と Vampire Weekend はかなりの僅差でした。
どちらを1位にするかで判断基準にしたのは、1枚だけ持ってしばらく暮せと言われたらどちらを選ぶかということ。
Contra の新しさよりも、The Suburbs の喜びを選びました。
聴くたびに得られる、素晴らしいロックを聴いているという感動。
音楽を聴くってことの喜びは、やはりここにあるのだという確信。
素晴らしい作品です。The Suburbs 。