Autechre "Move Of Ten"
$煩悩の日々

今年出たばっかりのオウテカの新譜 Oversteps の続編。
ていうか双子のようなアルバム。
Oversteps と同時期に録音された曲たち。
むしろレコーディングの後半に創られたものが多く収録されているのだそう。

巷では、Oversteps にオウテカらしいリズムをつけ、メロディを落としたアルバムとか言われてますが、僕の印象はちょっと違います。

そもそも Oversteps には音階の推移はあっても、いわゆるメロディはほとんどなかったと思います。
一般的にメロディ、という言葉で連想されるものが、という意味ですけど。

メロディやリズムに寄りかからないで組み立てられた音楽。
音楽というか「複層的な音粒子の流れ」が Oversteps でした。
それほど既存のフォーマットには収まらない、新しさを持っていたと思います。

この Move Of Ten には、いわゆるリズム、で想像される強制的な音のテンポを持った曲は、言われるほどは多くありません。
まあ、 Oversteps よりはテンポが強めかな、という程度。

存在するのは、やはりひたすら美しい音の動きです。
あいかわらず、強烈な音への美意識が、一音一音を研ぎ澄ませて、磨きに磨いて、さらにバランスに心を砕いて、音楽を創っています。

これは彼らだけの唯一無二の音楽。
ひたすらその空間に浸り、漂い、包まれるしかありません。

Oversteps には、多数の音がきらめきながら重なり、少しずつ流れ、ずれていく音空間があり、なんとなくそれを聴いている・身を浸している自分が溶解していく気がしたもんですが、こちらはその強めのテンポのせいか、ずらされている感覚は希薄です。

しっかりとしたリズムを用いられたのは、例えばこういった曲。


これはむしろ Oversteps の流れで来てる、美しい曲。


この曲は、また別の顔を見せてくれました。
独特の曲想、サウンドスケープです。


それでもやはり、同じ作業で創られた2枚目のアルバムの所以なのでしょうか。
全体の濃淡が Oversteps ほどの均一性に欠ける気がします。

むしろ、オウテカにとっては今回トライした方向性の整理のアルバムなのでしょう。

このアルバムで整理された今回のオウテカ・ビジョン。
さてさて、今度はどんな驚きを与えてくれますやら。