近未来SFの傑作でしょう。


リチャード・モーガン作 オルタード・カーボン(上・下) 

アスペクト文庫
煩悩の日々


人間の心・精神がデータ化され、チップとして取り出せる世界。

それを首にあるスリーブに挿入することで、どのボディ(スリーブ)をつけても自分になる。

予備のスリーブを準備してスタンバイ状態にしておけば、自分のカラダに万が一のことがあっても、チップさえ破損しなければ死ぬことはない。



その予備のスリーブ、肉体のクーロンのことをオルタード・カーボンと呼びます。

これがこの小説のタイトル。


また、何十光年を超える星間移動も可能となっていて、データ化された人の精神は物理的に移動しなくても、データ送信して移動先でインストールができる。


数多くのクーロンを専用施設で保管して、スリーブを入れ替えながら何百年も生き続けている大金持ちが、何者かに頭を吹き飛ばされ死亡。

そこは完ぺきなセキュリティが施されている自宅。


彼自身は、その直後に精神がオルタード・カーボンにデータ送信されて、別のスリーブにダウンロード、生きながらえることができた。

はたしてこの男は、侵入不可能なこの場所で、誰かに殺されようとしたのか、彼自身が自殺しようとしたのか。


この謎を解くことを依頼された、特殊部隊の男が主人公。


ハードボイルド+SF+ミステリーの設定。

サイバーパンクとも、フューチャーノワールとも、呼ばれてます。


この作家は、これがデビュー作ですが、フィリップ・K・ディック賞をとったりして、けっこう達者なストーリーテリングを見せてくれます。

最初、単行本で出てて、かなり興味あったのですが結局買わずじまい。


それが最近になって文庫本化されたので、これはチャンス、と。


いつの間にか、映画化も決まったらしいですね。

この世界を描くの、けっこう大変だと思いますが、ちゃんとできればすごい映画になるでしょう。


設定も、あまり突拍子のない感じはなく、自然に受け入れられます。

SFにはよく、その設定を頭に入れるのがたいへんなものもありますが、これはその苦労はありません。


こういう本は、よっぽどのSFマニアじゃない限り、どれだけ現実世界との違和感が少なく、想像力が掻き立てられるのか、がポイントになりますね。


ネタバレにもなるので、深くは書けませんが、人工知能が動かしているホテルが出てきたり、強化人間との戦闘があったりと、エンタテイメントとしての仕掛けも満載。

ハードボイルドとしても良質ですし、ミステリーとしても破たんはありません。


昔流行った、サイバーパンクの元祖、ウイリアム・ギブスンのニューロマンサーの現代版といった、趣もあるこの本、なかなか刺激的でオススメです。