Abacab という、薄~いアルバムを出して、フィル・コリンズはソロ活動で大人気。
残ったトニー・バンクスとマイク・ラザフォード(この人の名前、初めて出てきました)は、足元がグラつく感じがしたにちがいありません。
おまけに自分たちが寄って立ってきたブリティッシュ・プログレの王道(と思っているもの)からは、相当離れた地点に立っています。
ここで、2人が空中分解しそうな自分たち3人をつなぎとめるものを模索し始めたのは当然の成り行きかもしれません。
ああ、一応お伝えしておくと、この辺り全般には、相当僕の憶測と思いこみが入っていると思いますので、念のため。
自分たちをつなぎとめるものは、何か。
それはやはり、ジェネシスです。
ジェネシスの原点に帰ろう。
そして自分たちがやりたかった音楽をもう一度見つめ直そう。
(そうすれば、ジェネシスから離れつつあるフィルの気持ちも戻ってくるかも)
そうして、アルバム"Genesis" の制作が始まったのでした。
タイトルにグループ名をつけたのは、その意気込みというか、目標を忘れずにいるためだったのかもしれません。
暗いイギリスの雲のような一種の重さ、そしてミステリアスな雰囲気。
これだよ、これ。
このトーンが忘れられてたよね~。
なんていう、彼らの会話が聞こえてくるようなA面。
それでも今売らなきゃならないのはアメリカでだろ、こんなのばっかりじゃ、せっかく増えてきたセールスが不安だなー、などというレコード会社の面々。
メンバーも今の自分たちがやってる音楽、それもまたジェネシスである、というリクツに納得し、創られたB面。
このアンバランス。
彼らの迷いがそのまま出てきてます。
それでも、僕にとってはA面は痛快で、好きで何回も聴きました。
とくにフィルのドラムの音が冴える、1曲目のMama 。
ほぼ同時期に出た、ガブのⅢの革命的なドラムの音にトーンが似ています。
スネアがタムが、ガシッ、ガシッ、カシガシッと、打ち込まれていくこの曲は、かなり好きな1曲。
Home By The Sea もバンクスのキーボードもフィルのボーカルも大活躍する、とても印象的な曲です。
しかし、B面がね。。
ほとんど印象薄いです。これ以上のコメントありません。できません。
なにしろ、このアルバムはA面ばっかり聴いていたもんで。
このアルバムについては、おそらく自分たちでも消化不良を感じたのでしょう。
次に出したアルバムでは、少なくとも迷いは感じられません。
Invisible Touch 。
初めて全米No.1 を獲得しました。
本当に彼らが全米でNo.1をとることを望んでいたのかどうかはわかりませんが、前作Genesisで振り返ったイギリス的な部分を完全に振り払い、迷いなくアメリカにフォーカスした結果がついてきました。
ポップなプログレから、プログレ風アメリカンポップスへ。
シンプルなわかりやすさを基盤に、アレンジも凝り過ぎない、リズムも編拍子の多用は避ける、長めの曲にもキャッチーなメロディを忘れずに、などアルバムを通してポップスを志向しているのがわかります。
これなら、クルマの中で聴きながら快適なクルージングの邪魔にもならないでしょう。
でも僕にとっては、さらっと通り過ぎる、ひっかかりの少ないジェネシス。
向き合って聴くことはなく、なんとなく流しておけるジェネシス。
このアルバムをアメリカのマーケットは評価してくれました。
しかし、最終的にメンバーがどう評価したのか。
それはその後の長い空白期間が物語っているのでしょう。
この成功に満足したのか。
自分たちはこれからどこへ行こうとしているのか。
自分たちの音楽は、時代に求められているのか。
Mamaのオフィシャルにはリンクしか貼れなかったので、これをクリックして観てください。