Peter Hammill(ピーター・ハミル)。
言わずと知れたVan Der Graaf Generatorの中心人物ですが、VDGGの第1期修了後からソロアルバムを出し始め、今では何作出ているのか数えきれない状態。
最初のFools Mateから、意識的にVDGGとは違うソロらしい音楽をやろうとしてますが、VDGGのメンバーもほとんど参加してたり、やはりやりたい音楽はVDGG的なものなのか、アルバムの中に必ずVDGG的な大曲が入っていました。
その曲がまたいいんですよね~
In The End、 (In The) Black Room、Gog/Magog、A Louse Is Not A Home なんかね~
そんな感じでIn Cameraまできましたが、次のNadir's Big Chanceでは、自らパンクと呼ぶVDGGの世界にはなかった強さをもったアルバムを制作。これも凝縮度の高いアルバムでした。
あのころ、ハミルのソロアルバムは日本未発売のものが多く、聴くのがたいへんでした。
イギリス盤の中古が、とあるレコード屋の中古盤コーナーで、とっても安い一般価格(当時はプレミアムがついていたもので)で揃って売りに出ていたのを見つけ、夢ではないかと思ったことを思い出します。
さて、今日ご紹介するのは、その次に出たアルバム、Over。
ジャケットもいきなり自分のポートレイト風であったり、参加メンバーもG抜けのVDGメンバー、グラハムのバイオリンがフィーチャーされてる曲が多かったりで、雰囲気が180度転換。
自身の私生活での大きな変化もあったそうで、とても内省的な雰囲気を持ってます。
最初のCrying Wolf こそ、ガイ・エヴァンスの力強いドラムとハミルのカッティングがリズミカルに響く、前作の流れをつないできていますが、それはそこでお終い。
ここからは、雰囲気がまさにひきこもりの冬。
暗く寂しく、沈み込んでいきます。
曲名はAutumn。
人生の晩秋です。グラハムのバイオリンが寂しさを演出します。
ハミルの歌声も、なにかを慈しみ悲しむようなトーンに。
そして、Time Heals。
傷んだ心は時が癒す。
寂寥感は、寒風吹きすさぶ中、枯葉が舞い上がりる中で強まっていき・・
さらに気分は暗く、深く。
ギターの弾き語りのAlice、オーケストレーションが美しいThis Side Of The Looking Glassなどが続き、暗く沈みこんでいることの美しさ(なんのこっちゃ)を味わったり。
ハミルのセンチメンタリズムを堪能できます。
そして最後のLost And Foundでは、再びエヴァンスのドラムが戻ってきてハミルの歌もなにか吹っ切れたような、いつもの力強さを取り戻しています。
落ち込みからの帰還、ってか。
この繊細な美しさを持つ、ハミルのソロアルバム群の中では特異なポジションのアルバムを出した後、VDG(G)はその活動を停止し、ハミルは混迷の時代に入っていきます。
(Future Now と Enter K を聴いただけの、感想ですけどね)
僕にとってのVDGGは、この美しくも切ないアルバムで、活動を終了してしまいました。
おっさんになってから再結成したVDGGは、何か訴えかけるものが希薄な気がします。
それは、このアルバムに顕著なハミルの繊細さやセンチメンタリズム、不安定なバランス感覚、そんな要素が欠けてしまっているせいかもしれません。