ブログの記事を書くときに、やはり自分の思い入れの強いアルバムを選ぶわけですが、なぜこのアルバムがこんなに好きなんだろう、なぜこのアーティストにこんなに思い入れがあるんだろう、と日ごろは特に意識してないことを分析的に考えることになります。
そのためには、あれこれと、時にはそのアルバムを聴きながら考えるわけですが、やっぱり気持ち的なゆとりと時間が必要ですね。
仕事に追われてたり、体調がすぐれなかったりすると、音楽を聴いて癒されるだけで精一杯になってしまって。
すみません。
更新が遅れた言い訳でした。
というわけでフィル・コリンズ。
この人はジェネシスのドラムス兼ボーカルが本職だったわけですが、ソロとしてアルバムを出し始めたら、そちらがポピュラーミュージックとしてウケ始めたため、ソロシンガーと思ってる人もたくさんいるような状態になってしまいました。
そこでやってる音楽は一般ウケするものは陽気でリズミカル、もしくはホワイトソウルようなキャッチーな曲ですね。
しかし。
この人の本領はそこにはないことを僕がよーく知ってます。
この人がその良さを発揮するのは、静かな、スローな、内省的と言っても過言ではないような、一見地味な曲です。
どのアルバムにも、必ず収録されています。
たぶん、本来はとてもナイーブな人なんでしょう。
スローなバラードのバックにいつも流れている独特のストリングス。
なんとも寂しげなトーンです。これが流れるだけで、おお、フィルの曲だ~とわかります。
それはファーストアルバムから変わってません。
最初から、この人は自分のスタイルを築いていました。
ジェネシスで初めて自分の曲を書き下ろしたのは、Dukeでした。
なかなか良い曲で、さすがにアルバムの中心的な曲ではないけれど、うやるじゃないのフィル、と感心したもんです。
その後、ここまで独自のスタイルで音楽を創り続ける人になりました。
ああ、ダメですね。いつまでたっても本題のアルバムに行こうとしません。
というわけで、Both Sides。
アルバムのジャケットには、自分の顔の大写しを出し続けているフィル。
よほど自分の顔に自信があるのでしょうか。ここでもおんなじです。
しかし、アルバムの中身は今までとまったく違っています。
アルバムのクレジットによると、フィルはほとんどの楽器を自分で演奏してます。
そして自宅のスタジオでデモ用に収録した音源が、もっとも臨場感あって求めていた雰囲気が出ているということで、そのテイクを正式採用しています。結果、自分でプロデュースしたも同然。
制作時期は、奥様との離婚と重なり、精神的にも辛い時期だったと思われます。
そんな背景で制作されたアルバムです。
楽曲のデキは今までで最高です。
ほとんどがスローな曲。音と音の空間をたっぷりとって、いつものストリングスが遠くに流れて。
ひとつひとつの楽器が繊細な音とメロディを奏でます。
フィルが優しく、温かに歌います。
冬の、よく晴れた日の、儚げな夕暮のようなアルバム。
温かさと、寂しさと、落着きと。
ゆったりと流れる、澄んだ時間。
フィルもこのアルバムが気に入っているようですが、やはりセールス的にはふるいませんでした。
派手さはまったくありません。
これがフィルの代表作だと言う人も、ほとんどいないでしょう。
しかし、ボーカリスト・フィル、コンポーザー・フィルの最高傑作。
いつまでも聴き続けていたい、素晴らしいアルバムです。
