吉田美奈子、大貫妙子、最盛期の中森明菜、結婚する前の松田聖子、中島みゆき、ケイト・ブッシュ、リンダ・ロンシュタット など、思いつくままにお気に入りの女性ボーカルを挙げてみましたが、、
あんまり女性ボーカル聴いてねえな、というのが感想。
本来女性ボーカルは好きなんだけど、フツーのポップスをあまり聴かないもんで、聴きこむまでいかないのが原因でしょう。
ところでケイト・ブッシュ。
先日、彼女の情念が噴出して荒れ狂う最高傑作 The Dreaming をご紹介しました。
これにイカれ、翻弄され、金縛りにあい、頭の中でドンドコドンドコ鳴り続けた僕にとって、このアルバムの次作ほど、待ち焦がれたアルバムも今までなかったでしょう。
そして出たRunnning Up That Hillというシングル。The Dreaming ほど変質的じゃない偏執的ではないけれど、期待にそぐわないデキ。否応にも高まる次のアルバムへの期待。
そして出た Hounds Of Love 。
うれしさのあまり、カセットに録音したレコード(このあたりは死語、というか死事ですな、すでに)を聴きまくります。
しかし、、なぜか乗り切れない自分がいることに薄々気付き始め。
最初は、そんなことはないと必死に否定する自分。
そして、含み損を抱え続ける株を意を決して損切りするかのように、「違う!」と叫びます。
僕にとっては、ケイト・ブッシュはその前作の最高傑作で燃え尽きてしまい、その独特の世界観は急速に縮小してしまったように感じたのでした。
その後数枚のアルバムをインターバルをおきながら発表してケイトですが、まあ好きなアルバムかな、という位置づけをキープするのが精いっぱいな状態です。
そしてさらに月日は流れ。
結婚して子供も産んだケイト。年齢も40代半ばか。16才で見出された天才少女が。。
ニューアルバムを出しました。
CD2枚組の、Aerial。
ケイトが変身しました。見事に。
今までは突き抜けるような高音主体のボーカルが、The Dreaming では、バックのサウンドと壮絶なバトルを演じていました。うまいし、すごいし、表現も豊かでした。
しかし。
ここで聴けるケイトの歌は、生き物のようです。
おそらく自分の持つ才能と情念に突き動かされ、発せられてきた歌が、子供への愛情や慈しみにゆっくりと覆われながら、静かに熟成をしてきて、この生き物のような歌に開花したのかもしれません。
昔のようなするどい高音は、その片鱗を覗かせるだけです。
その声は、落ち着き、深みを増し、慈しみにあふれています。
そして、その声のニュアンスを消さないように、シンプルに控えめなバッキング。
アルバムの印象は、地味で静か、です。一般的なアピール度は高くないかもしれません。
それでもケイトがここで見せてくれる極上の歌は、滑らかに、優雅に動く、生き物のようです。
「π」という、円周率の数字をゆっくりとひたすら言い続ける曲があります。
そのメロディの抑揚も少ない、普通の歌手が歌うとアホかいな、となりそうな曲でも、その声とニュアンスに聴き入ってしまいます。
洗濯機のことを歌った曲。
これもただの歌手が歌うと、こんなんで金とるなーですが、ケイトは自分の世界を創り、そこに僕を引き込みます。
CDの2枚目では、後半に向けて、とてつもなく美しい世界が繰り広げられます。
狂気の一歩手前から、慈しみへ。
ケイトの世界観が大きく変わりました。
ケイトのボーカルを耳を澄まして、気持ちを集中して追いかける。
それだけで、至福の時間をもたらしてくれる。
ああ、早く次のアルバムを創ってくれないでしょうか。
ケイトが60才とかにならないうちに。