1967年6月、真の父母様(文鮮明先生、韓鶴子女史ご夫妻)が3人のお子様を伴って来日されました。真のお母様にとっては初めてのご来日でした。
 歓迎会で挨拶に立たれた真のお母様は、「胸がドキドキして鳩のようです」とおっしゃいました。ちょうど、おなかに恩進様がいらっしゃったと思うのですが、本当にお優しく、しぐさの一つ一つも美しく、おしとやかでした。私は、「こういうお姿が真の女性なんだ」と感動しました。
 ご滞在中は目黒に準備した小さな2階家で宿泊され、私はその期間、ご家庭にお仕えすることになりました。真のお父様が会議を終えて戻ってこられると、お母様が階段を下りてこられます。決してダダダッと駆け下りるのではなく、音もなく静かに下りてこられるのです。階段の途中から首をかしげてお父様をご覧になり、そんなお母様をお父様も見上げておられる──。まるで映画のように美しい光景でした。
 当時、5歳に満たなかった孝進様は、元気に走ってきて、お父様の首にバーンと飛びつきます。そしてそのまま10分も20分もずっと首にしがみついていらっしゃるのです。いつ降りなさいと言われるかとびくびくすることもなく、「いつまでもそうしていていいよ」という世界でした。
 あるとき、孝進様がナイフをいじっていて指を切ってしまわれたことがありました。血がバーッと出て、孝進様は大声で泣かれました。お母様がその声を聞いて2階から下りてこられ、「孝進、そんなに泣かないのよ」と静かに諭されました。落ち着いたお母様のご様子に、慌てていた私たちもほっと安心したのでした。
 初めて間近に拝見した真のご家庭には、愛と信頼の絆があると思いました。それまでは「闘うお父様、先頭を行くお父様」でしたが、お母様や子女様とご一緒のお父様を見て初めて、ご家庭の中のお父様を知ることができたのです。
 このような真のご家庭のお姿を通して、私の信仰観が変わりました。「原理」は単なる理論ではなく、実体のご家庭、真の父母様が原理の実体であり、天国そのものであること、この真っ暗な世界の中で真のご家庭だけには神様が宿っていることを実感したのです。
 

「真のお母様、感謝します」より
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