2022年浜風3月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
戦なきとよあしはらや菫草 桑田 青三
ウクライナの人々が逃げて国を去る悲惨さに、心が詰まります。
平和な日本を『菫』に託し、格調高く詠まれていて、素晴らしいと思います。
犠牲者が一人でも少なく、侵略戦争が終結するよう祈ります。 (原田えつ子)
青空よ寂しくないか桜満開 島 さくら
満開の桜と青空を対比したのが良い。どちらも春爛漫で心うきうきという面もあるが、一方では空が青ければ青いほど、そして満開の桜も寂しさを誘う面もあり、それを空に問いかけている作者も、一抹の寂しさを感じているのでは無いでしょうか。その心情を上手く表現したとおもいました。 (田 友作)
「ゲルニカ」を眺める為の椅子ふたつ 金子うさぎ
ゲルニカは説明する事もないだろう。為のとすると椅子の現状説明になって、フォーカスが椅子に向いてしまう。
「ゲルニカ」を眺めている椅子ふたつ
余分なことは言わないこと。この句には季語は無用、季語はこの句の良さを消してしまう。 (今野 龍二)
戦なきとよあしはらや菫草 桑田 青三
コロナ禍で心身の疲弊している世界、命の祭典五輪が行われている。その時、血の繋がる隣国へ侵攻する国。
戦なき我が国、野の菫草が教えてくれています。 (濱本 寛)
送料は無料です春一番 田 友作
思わず笑ってしまいました。思いがけない視点で面白かったです。 (G)
「ゲルニカ」を眺める為の椅子ふたつ 金子うさぎ
絵画からの【戦争】は、遠いものだったけど、TVの画面からは現実の【戦争】を見せつけられる。
椅子ふたつ、【平和】を語り合って欲しいですね。 (島田 啓子)
どの紙もひそとさざめく大試験 かわにし雄策
試験会場の静かな緊張感の表現がうまい。
試験問題や答案用紙をめくる音をさざめくと捉えたところがいい。 (國分 三德)
「ゲルニカ」を眺める為の椅子ふたつ 金子うさぎ
椅子が二つの意味を考えました。よく分からなかったのですが、白と黒、生と死、男と女。戦争と平和でしょうか。 (恵夢せとか)
大仏のくちびるなぞる日永かな 恵夢せとか
茶の間に刻々届く戦争の映像。それをまるで映画を観るように見ざるを得ない毎日。そんな遣る瀬無い心に、この大らかな句が 救いになりました。 (原田 洋子)
ゆきずりの猫と花見てあと一句 金子うさぎ
作句に悩んでいるいる時にふと出会った(掲句の場合は猫)猫にヒントを貰って一句出来上がり!! そういう事ってありますね。良かったですね。 (小峰トミ子)
陽炎やきつと戦艦ポチョムキン 桑田 青三
以前観たこの映画は衝撃的だった。1905年ロシア第一革命をモンタージュ理論という技法を絡め、独特に幻想的に描いた作品。中でもコサック兵が民衆を襲う残虐なシーン「オデッサの階段」は余りにも有名である。
そして117年後の今、現在。奇しくも、あのオデッサにロシア侵攻が迫っているというニュース。
何という歴史の繰り返し。重なる。革命、戦争がもたらす悲惨さを映画を通し、陽炎という季語でその意味を表現された掲句に釘付けになった。 (島 さくら)
うつらうつら春愁を置くオットマン 原田 洋子
たぶんきれいな細身のレディが、きゃしゃな足をオットマンに預けて、なんとなく物憂い感じで椅子に座っている( 横たわって) ような……? 春の昼さがり、場所はサンルーム……?などといった絵が浮かぶ、おしゃれな一句。
おしゃれでいいな!と、感じました。 (佐藤 ポチ)
もう待てぬ反戦ビラを春一番 島 さくら
本当にもう待ってなどいられる状況ではない。直ぐにでも止めなければ...。
逸る気持ちが春一番。 (上薗 優)
君の椅子そっと座った卒業の日 佐藤 ポチ
解ります。好きなのに、好きと言えず、迎えてしまった、卒業の日。貴女のぬくもりの、せめて椅子に。そっと座って。臆病者の愛が。 (長谷川 博)
うつらうつら春愁を置くオットマン 原田 洋子
とっても気になるオットマン、そして、ポチョムキン。
意味を調べたら、オットマンは足置き。真夜中の私そのまんま! うつらうつら…。
「春愁を置く」と書いたところがニクイ(上手い)なぁ~♪♪ (金子うさぎ)
本日は雛壇でネコ身づくろい 佐藤 ポチ
何かゆったりとした時間、そこにはまっている自分を感じ特選としました。
(福島 雪雫)
友だちか恋人なのか目刺し焼く 大西 惠
彼女、俺のこと恋人と思ってくれているだろうか。目刺しを焼きながら思いに耽っているつましい学生時代を思い出します。 (桑田 青三)
コトリとも受験の椅子は声挙げず かわにし雄策
「どの紙もひそとさざめく大試験」と同じ内容なので、決めかねました。どちらが試験中の音として気が散るかなと思ったとき、紙をめくる音は皆がさせているのでさほど気にならないし、それを聞いているほど余分な時間は無い。が、椅子をガタつかせたら、ハッとして気になる。ということで、これを特選にしました。
(山下 宗翆)
「ゲルニカ」を眺める為の椅子ふたつ 金子うさぎ
この作品には季語がない。しかし、季語の全てを総合しても敵わないと思われる圧倒的な詞、「ゲルニカ」が万感の想いを込めて屹立している。
世界の美術家、カメラマン、小説家、詩人、俳優、音楽家、等の才能が幾たび「ゲルニカ」の中に佇み、通過して行っただろう?
その中で何人もの斃れた人々がいる。用意された二つの椅子の片方に坐るのはナチスとフランコの暴圧と闘ったそのような人々の群像だろうか? (かわにし雄策)
「ゲルニカ」を眺める為の椅子ふたつ 金子うさぎ
「ゲルニカ」と「椅子ふたつ」、これだけですべてを表現している句だと思いました。二つの言葉が強烈に心に飛び込んできました。季題の「椅子」をよくぞ持ってきたものだ、と思います。無季句ですが、それを感じさせず、また、無季だと気づいても、このままでいいんだ、と思える作品でした。 (大西 惠)