ネタバレなし
個人的に大川橋蔵は、殿様とかちょっと身分高めの武士が似合うと思っていたが、いやいやこの役、今までで一番似合っているのでは。
田中春男を相手に、コミカルな演技を見せてくれる橋蔵さん、しかし「この首一万石」のようなワイルドさはなく、どこかお上品でもある。
このわけは後々わかるのだが、ちょいちょい見せるとぼけた顔や笑える仕草が、「恋や恋なすな恋」や「恋山彦」などを見たあとでは新鮮で、橋蔵のまた違った側面を楽しめる。
眉なしお歯黒でもとても美しい青山京子の家から、大河内傅次郎の次郎長一家に田中春男と移った橋蔵が、非常に肩の力を抜いた軽い演技で笑いを誘う。
マヌケの田中春男のボケさ加減も良いが、注目は堺俊二。吃音の役なのだが、何故か節をつけるとどもらず喋れる(唄える)のである。これがまた上手い。劇中劇では浪花節を披露。
このおばさんも可愛いので必見です(笑)。
橋蔵もとても楽しそうに石松を演じていて、楽しい。
石松役の橋蔵が斬られると、観客が怒って皆座布団を舞台に投げる。それを敵役の田中春男なんかが「うわ、芝居や、芝居」と言いながら逃げているのかおかしい。
マキノ雅弘監督に外れなし。
軽く見られますので、どんな気分のときにもお勧めの作品です。
本筋はこの森の石松の劇ではなく、他にありますが、それは観てのお楽しみということで。