最近、You Tube等で日本舞踊をよく見ます。

 

繰り返し見てしまうのが、故人では上方舞の吉村雄輝さん。
役者の梅幸さん、富十郎さん、三津五郎さん…。

 

現役では当代猿之助さんの踊りが好きです。

 

あぁいいな、と思う人は皆ピタッと綺麗に止まるんです。
観ていて本当に気持ちが良いです。

 

 

舞踊という動きの芸術。

その基本は、動かないことなのかも、なんてことを近頃思います。

 

そして、きちんと止まる為には、まずきちんと立つこと。

 

 

能の稽古仲間で、長年、合気道をされている方がいらっしゃいます。

この方の立ち姿が格好良い。

スーッと、というのはこういう立ち方なんだな、と感心させられます。

 

 

また芸人仲間では、太神楽の仙成さんの踊りを見た時にも、体幹がしっかりしているな、と感じました。

 

 

きちんと立つ、口で言うのは容易いことでも、実際にそれをするのは大変なことです。

 

 

若手では特に鷹之資さんの立ち姿が好きで、歌舞伎座で主役で踊る姿を早く見たいなぁ、と思っていました。

 

 

そんな鷹之資さんが、お父様である富十郎さんの13回忌の追善興行で『船弁慶』の主役をされるということで、観劇して参りました。(富十郎さん一世一代『船弁慶』後。雲助師匠と武智歌舞伎塾。

 

 

何しろ『船弁慶』は前半が静御前、後半が平知盛の幽霊、と全く違う二役を踊らなくてはなりません。

 

能らしい動きをしながら、少ない所作で、義経と別れる静の哀しみを見せる前半。

 

恨み骨髄の幽霊の迫力を出さなくてはいけない後半。

 

 

静と動、真反対の二人。

 

 

難しい踊りです。

 

 

鷹之資さんは能の仕舞も習われているそうで、前半の静御前の舞も流石でした。

 

 

後半、知盛を見ていて、富十郎さんのことを思い出しました。
舞台の上でとても大きく見え、もしかしたら明日は弁慶を倒してしまうじゃないか(笑) と、当時、何度も通ったんです。

 

 

そして最後の幕外の引っ込み、ここの太鼓、私大好きなんで大興奮でした!

 

 

雲助師匠から『芝浜』を習った時「ネタが成長していくのを楽しみに掛けていって」と言われました。

 

 

演じる側だけでなく見る側も同じです。

 

 

これから年月を掛け、成長していく静御前と知盛を見る、観客としての楽しみが出来ました。

 

『完本 中村吉右衛門』(小玉祥子)には、
「女形さんはある程度、器用なひと程得をするが、立役は年齢がいくと、生きざまが出る。だからちゃんと歌舞伎に向き合っていきなさい。」と吉右衛門さんがおっしゃっていたと記されています。

 

 

鷹之資さんは、伝統芸における理想的な若手、じっくり応援していきたいです。

 

 

これもまた、歌舞伎を見る喜びです。

 

 

(2023.2.5 10:41 HPに掲載)

 

 

【関連ブログ】
富十郎さん一世一代『船弁慶』後。雲助師匠と武智歌舞伎塾。

十一月の歌舞伎座から。富十郎さん、三津五郎さんの息子たち。

 

 

玉屋柳勢(たまやりゅうせい)とは>
落語協会の噺家。2020年真打に昇進。
六代目 玉屋柳勢を襲名いたしました。
これまで師匠方から「直に」受け継いだ落語。
それはアタシの財産です。
その楽しさと良き伝統をお伝えできたら嬉しいです。

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