ルール違反のまやかしか、継承された話芸か。

 

 

その落語を聞けば、わかる方にはわかる。

 

と思います。

 

 

さてさて

 

ちょっと刺激的な言葉を使わせて頂きましたが・・・

 

 

あなたは「わかる人」ですか?

 

 

様々な師匠方を通り抜けて、磨かれてきた古典落語。

 

落語は、ネタ元かネタ元に近い方に習いに行く、というのが大原則。

 

特に、特別なサゲやくすぐりのある噺は、そのサゲやくすぐりをお考えになった師匠にまで許可を得たり、と、きちんと筋を通さなければなりません。

 


それがプロとしての礼儀。

 


そうやって伝統は守られています。

 

そのため、お稽古を付けて頂く場合も、どの噺をどの師匠にお願いするか…

 

悩みに悩み、検討を重ねた上で慎重にお願いしています。

 

 

わざわざ稽古の為だけにさらって頂くのは申し訳ないので、その師匠が高座に掛けるタイミングでお願いに上がるようにしています。

 

ですからお稽古を付けて頂くまでに何年も掛かってしまう、という事もざら。

 

 

噺を継承させて頂く、とはそういう事なのです。

 

 

一方、きちんと習わずに勝手に覚えて高座に掛けることを楽屋では「泥棒」(ルール違反、犯罪ですね。※1)といいます。

 

これは御法度。

 


また、ルール違反ではないけれど…というのが、「脱法」「又(また)稽古」と言われる行為。
ネタ元の師匠に習った方から習う事を言います。※2

 

 

模造噺か純正噺か。

 

 

それを見極めるのは大変ですが、
継承される上での大切なポイントが必ずあるので、
分かる人には分かる

 

と思います。

 

ちゃんと習っているのならばそうはならないよね、という事や、中身はこの師匠なのに、サゲが別の師匠?など、アレ?という事があるので。

 

中身を削ったり、ギャグやくすぐりを付け加えて噺を磨くことはあります。
完全にオリジナルの場面を入れたり、サゲ合戦になっている噺で独自のサゲにする、という事もあります。

 

但し基本的に型というものは決まっているのです。

 

 

因みに、アタシがこれまで教えた事のある噺は、



弟弟子に大工調べ、寿限無、真田小僧を。
仲間に甲府ぃ。
先輩に兵庫船(無理やり(苦笑))。

 


それでもお稽古を頼まれた場合、アタシなんかがお稽古をつけるのは…

 

と言うことで、アタシが習った師匠にお願いするようお伝えしています。

 

 

稽古を付けて下さった師匠や、先人に敬意を表して。

 

 

 

※1
ある師匠が「志ん朝師匠に習った噺」と高座で言ってあるネタを掛けていたそうです。しかし、志ん朝師匠は「俺はあいつに稽古をつけたことはない!」と怒ってらしたと、お弟子さんの本に書いてありました。
これは、志ん朝師にも失礼ですし、何より実際にお稽古をつけて下さった師匠に失礼かなと思います。

 

 

※2
アタシの師匠(市馬)から習うのもなんなので…『高砂や』『大工調べ』は三三兄貴に習いました。
一朝師匠に教わった『芝居の喧嘩』はもしかしたら「又稽古」に当たるかもしれません。(もともと、権太楼師匠が講談から輸入して作り上げた形です。ただ、権太楼師匠は今滅多にされませんので…)
アタシが習ったネタで思い当たるとしたら、それくらいかしら…。

 

 

(2022.5.28 20:43 HPに投稿)

 

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<玉屋柳勢(たまやりゅうせい)とは>
落語協会の噺家。2020年真打に昇進。六代目 玉屋柳勢を襲名いたしました。
これまで師匠方から「直に」受け継いだ落語。それはアタシの財産です。
その楽しさと良き伝統をお伝えできたら嬉しいです。
落語会「噺の種」「玉屋噺の会」「ここだけの話」「ヒルラクゴ」「101らくご」を自主開催。

 

■玉屋柳勢プロフィール詳細は公式HPのこちら