寄席でお馴染みの『浮世床』。

 

アタシは個人的に「本」の件が面白い人に憧れを持ってまして、圓太郎師匠と白酒師匠の『浮世床』の「本」の面白さに憧れております。

 

そのほか、三三兄さんの『浮世床』は圓生型で将棋で珍しい演出があります。

 

ストーリーはほぼなく、暇な若い連中が床屋に集まってワーワーやってます。というだけの、実に落語らしい噺。

 

寄席でよく掛かるのは、字が読めないのに一生懸命読もうとする奴をからかう『本』の件と、寝ていた仲間の色っぽい噺をみんなで聞く『夢』の所。


他にもみんなで一芸の見せっこをする『芸』に、将棋で暇つぶしをする『将棋』の件があり、全て通しでやるとやると30分以上掛かります。

 

アタシは芸の一部と夢の所を、二つ目の中期くらいによく掛けてました。

 

 

老人ホームでよくウケたのよ、これが。

 


習ったのは当代文治師匠。

 

と言うのも、うちの師匠(柳亭市馬)に

「浮世床やりたいんですが、うちの協会はみんな本と夢だけですよね。芸の件もやりたいんですが、どうしたらいいでしょう?」

 

と聞いたら、

 

「(先代)文治師匠の得意ネタだし、平治から習いな。」

と言われ、まだ文治襲名前の平治師匠に教えて頂きました。

 

当然、先代文治師匠からのネタなのですが、先代は「今の人にはわからない」と将棋の所をされなかったそうで、芸と本と夢の件をお稽古をつけて頂きました。

 

ちなみにうちの協会の『浮世床』は、扇遊師匠に教わる人が多いのですが、扇遊師匠は小満ん師匠から。

 

小満ん師匠は小のぶ師匠から、とのこと。

 

その小のぶ師匠が数年前、寄席に出演されるようになって、「みんなが浮世床を自分の型でやってるから驚いちゃった!」と仰ってました(笑)

 

その小のぶ師匠は先代文治師匠からだそうです。

 

 

あれ?

 

 

そうなんです。

 

つまり落語協会のほとんどの人の浮世床は文治師匠の『浮世床』なんです。

 

芸協ネタと言われるようなネタでなく、スタンダードな落語でこういう例はかなり珍しいと思います。

 

他に…何かあるかしら?

 

 

ちょっと浮かびませんね。

 


『浮世床』は二つ目の出番でもやっていい噺なんですが、夢の件はご法度とされています。

というのは夢がらみの大ネタは一杯あるので、二つ目は遠慮しなさいよ、ということだそうです。

そううちの師匠(市馬)から教わりましたし、扇遊師匠もお稽古を付ける時にそう仰っていると聞いています。

 

「ウケるからやりたい気持ちはわかるが・・・、わきまえろよ」とはうちの師匠の言葉。

 

 

(2021.12.6 HPに投稿)

 

 

<玉屋柳勢(たまやりゅうせい)とは>
落語協会の噺家。2020年真打に昇進。六代目 玉屋柳勢を襲名いたしました。
これまで師匠方から「直に」受け継いだ落語。それはアタシの財産です。
その楽しさと良き伝統をお伝えできたら嬉しいです。
落語会「噺の種」「玉屋噺の会」「ここだけの話」「ヒルラクゴ」「101らくご」を自主開催。

 

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