そ５月は観たい映画が目白押しでしたが、なかなか観る時間が合わなかったり終わってしまったり

花戦さ

池坊についての予備知識として、いけばな発祥の地とされる六角堂の正式名称は紫雲山頂法寺で、六角堂（本堂）の北側は、聖徳太子が沐浴した池の跡と伝えられるところで、その池のほとりにあった僧侶の住坊が「池坊」と呼ばれるようになり、六角堂の執行（しぎょう）として寺の実務を担っていた池坊は、専慶・専応らがいけばな成立期において大きな活躍を見せ、華道家元の地位を確立した。

ネタばれしてますさかいお気ぃつけください

戦乱で荒れ果てた京の都に、花をいけて世の平穏を祈り、人々に生きる希望を与えんとする、「池坊」と呼ばれる僧侶達がいた。

池坊一門の池坊専好は野山の花を摘み、河原の亡骸に花を手向け、経を唱えていた。

当時飛ぶ鳥を落とす勢いの織田信長から、松を使った生花を所望と池坊に通達があり、専好が岐阜城に行くことになる。

専好は巨大な松を昇り龍に見立て、今の信長を表すが、松の枝の継いだ場所が折れ一同真っ青になったところ、木下藤吉郎が座を和ませ事なきを得る。

その時に専好は信長の茶頭千宗易（後の利休）と言う男に会い、言葉をかわす。

時は流れ信長が本能寺に倒れ、木下藤吉郎が世を収めつつあった。

専好は六角堂の執行（池坊のトップ）になり、自分の好きな自由ないけばなを封印する窮屈な日々を送っていた。

ある日、執行の仕事である武家にいけばなを奉納した帰り、河原に来た専好は、亡骸から髪の毛を切る輩を見つけ、髪を切られた亡骸に花を手向け経を唱えると、その娘の亡骸が目を開ける。

その娘を助けるものの、彼女は物も食べず何も話さない。

専好は蓮の蕾を取ってきて娘の部屋に置くと、蕾が開くぽんという音に娘は反応して、部屋中に蓮の花の絵を描く。

専好はそれを見て彼女の絵の才に驚き、別の日に花を探しに行く時その娘を連れていく。

娘が黄色い花を触ろうとした時、専好はその花には毒があり、三口食べたら死んでしまうから触れてはいけないと諭し、「蓮（れん）」と名付け、知り合いの尼僧に預ける。

そんなことのあったしばらく後、幼馴染の吉右衛門の店で専好は自分の思うままに花をいけ、しばしの息抜きをする。

いけた花を見た千利休は専好のものと見抜き、吉右衛門に彼に会う段取りを頼む。

再び会った二人だが、花以外のことに興味のない専好は、利休の事はすっかり忘れていた。

後日千利休に招かれた専好は、庭に咲く見事なあさがおに、茶室にいけられた朝顔に驚き、利休のたてた一服の茶に心をほぐされ、執行になって以来の自分の気持ちを涙ながらに語り出す。

寺に戻った専好は、以前より更に独創的な花をいけるようになり、町衆もその躍動感に感心する。

再度六角堂を訪れた利休もまた専好の花に感銘し、自分の茶の湯におけるわびさびを追求していく。

しかし、そんな利休をよく思わない天下人になった豊臣秀吉は、黄金の茶室を作ることを利休に無理やり命じる。

秀吉が北野大茶会という、町民も自由に参加できる茶会を開く事となり、専好は利休のために花をいける依頼を受ける。

その時、行方不明になっていたれんが山の洞窟にいて、専好が事情を聞くと、彼女の父は秀吉のお抱え絵師で、猿の絵を描いた為に磔になり、れんも身を隠さなくてはいけないのだと語る。

そんなれんを専好は山の空き家に住まわせ、絵を描くように言う。

大茶会が始まり、秀吉は黄金の茶室で自ら茶を点て振る舞う。

利休は楽しそうに町民に茶を点て、専好は利休のために、木の枝に花をいけ、それを見た町民は列をなし利休の茶を求め、その様子を見た秀吉は気分を害し、翌日より茶会を中止する。

茶会が終わり、人のいなくなった夕暮れに吉右衛門と利休と野点を楽しんだ専好は、利休になぜ黒茶碗を使うのか聞いたところ、利休は金色も赤も緑も黒も全部好きだが、今は「懐が深い」から黒が一番好きだと笑って答えた。

後日秀吉の茶室に招かれた利休は、黒茶碗を使い秀吉の不興を買い足蹴にされる。

その後、秀吉が大徳寺の門をくぐる際に、石田三成が大徳寺が設置した門上の千利休像が、秀吉を見下ろすため「不敬」であると告げ口をする。

秀吉は利休に詫びを入れるよう命じたが、利休が大徳寺に寄進した礼に大徳寺が作った像なので、利休は自分がどうこうできないと答える。

前田利家はこの事を憂い、専好を呼び利休に詫びを入れるように頼み、専好は蕾の梅を持って利休を説得するが、時既に遅く、利休は自分の黒茶碗を専好に託し、梅を愛で切腹し、首は晒される。

大雨の中、専好は晒された首に花を手向ける。

それから、専好は花を切る事が出来ず、六角堂に花を飾ることがなくなった。

見かねた吉右衛門は利休の四十九日に、町民に花を持ってこさせ花をいける。

それを見た専好は皆の心を知り、町民とともに六角堂をたくさんのいけばなで埋め尽くす。

その様子を三成が見ていて秀吉に伝えるが、子供と遊ぶ秀吉は捨て置けと言うが忘れてはいなかった。

その後秀吉の息子鶴松が亡くなった後、町民の間で利休の呪いが囁かれ、町には秀吉を揶揄する落首もあらわれる。

それから六角堂に訪れる町人が、言いがかりの罪で捕まり、打ち首にされて晒され、吉右衛門も専好の目の前で殺され晒される。

れんも追い詰められ、いつかの黄色い毒のある花を食べ自害する。

あまりの仕打ちに専好は、花を以って秀吉に抗議しようと死をも覚悟して、利家を訪ねて秀吉に花を奉納したいと持ちかける。

専好は弟子たちに「これは花の戦や」と言い、信長の時のように大きな松をいける。

仕上げは一人でやると、弟子に塁が及ばないよう帰そうとするが、弟子たちも一歩も引かず、それも予期した専好は、自分への破門状を懐から出し、今まで共にあった弟弟子の専武に後を託し、専武は傍にあった花菖蒲を専好に渡す。

一人になった専好は、亡くなった町民の名を花に託し、心を込めていけて、次の日秀吉に挑む。。。

↑実際に前田邸で専好のいけた物を復元した大砂物で、資料で後ろの四幅の掛け軸には猿の絵があった記述があり、飾った目的が映画の通りではないのですが、史実を上手く使った物語でした。

いい話だった～。

そしていけられた花だけでなく、野に咲く花がとにかく美しい。

名もない民草（専好は名高いです）が権力者の天井まで届く鼻をポッキリってお話は、痛快で大好きです。

歴史物は見る目線によって、物語が全く違って見えますが、今回は秀吉が悪役で、傍にいる三成がとっても嫌～な役回りになっていました。

市川猿之助がサル（秀吉）の役をやったのは、名前のせいかとちょっと思いました

専好の天才ゆえの悩みや、同じに道を極めようとする友の利休を亡くした専好のショックは如何ばかりか、その時に慰めてくれた町民たちが言われなき罪で処刑され、その時の専好の表情がなんとも言えなかったです。

専好は花の美しさを通じ、秀吉が嫌っていた黒茶碗や猿の絵も美しいということを伝え、権力者になり、傲慢になってしまった秀吉を諌めたのはあっぱれです

武士を相手に剣で血を流すことなく、あえて自分の得意分野で諌めようとする姿勢が、僧侶としての矜持と亡くなった者たちへの供養になっている気がします

そして、最後に自害したと思っていたれんが、黄色い毒の花を二口食べたら仮死状態になり、生きて戻ってきたことが、気持ちをホッとさせてくれました。