「現金給付」と聞くと、多くの人はこう思うのではないでしょうか。
それって、ただのバラマキじゃないの?
確かに、「政府がお金を配る」と聞けば、人気取りのための政策のように見えるかもしれません。
しかし、経済学の世界では、現金給付はまったく別の意味を持っています。
それは――
「マイナスの税金」
という考え方です。
この概念を提唱したのは、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者、
ミルトン・フリードマン です。
彼は、政府による再分配政策をできるだけシンプルにすべきだと考えました。
現在の制度は、
- 税金を取る(所得税など)
- 福祉として給付する(生活保護など)
という、まったく別々の制度として運用されています。
しかし、フリードマンは言いました。
それを分ける必要があるのか?
彼の考えは非常にシンプルです。
所得が多い人からは税金を徴収する。
所得が少ない人には、逆にお金を支給する。
つまり、
- 所得が高ければ「プラスの所得税」
- 所得が低ければ「マイナスの所得税」
というように、
税制の中で再分配を完結させてしまえばよい
という発想です。
たとえば、ある一定の所得を基準とした場合、
- 年収500万円の人は、税金を支払う
- 年収200万円の人は、税金がゼロになる
- 年収100万円の人は、逆に政府からお金を受け取る
という仕組みになります。
このとき、政府が支払うお金は、
「福祉」ではありません。
それは、
徴収しすぎた税金を返している
のと同じ意味を持ちます。
つまり、現金給付とは、
「政府が国民にお金を配っている」
のではなく、
税制の結果として、マイナスになった税額を支払っている
にすぎないのです。
この視点に立てば、
現金給付は「バラマキ」でも「福祉」でもなく、
税制の一部としての
合理的な所得再分配手段
ということになります。
そして重要なのは、
この「マイナスの税金」という仕組みは、
極めて低コストで実行可能だという点です。
新たな制度や審査機関を作る必要もなく、
既存の税制の延長線上で実施できるため、
複雑な「給付付き税額控除」などと比較しても、
行政コストを大幅に抑えることができます。
消費税減税のように、
社会全体の価格体系を歪めてしまう政策ではなく、
必要な人に、必要な分だけ、
直接的に所得を補填する。
それが、
「現金給付=マイナスの税金」
という考え方なのです。
だから、消費税減税より現金給付の方が合理的である
「マイナスの税金」という考え方に立てば、
なぜ消費税減税よりも現金給付の方が合理的なのかは、極めて明確になります。
消費税減税という政策は、
- お金に困っている人
- そうでない人
- さらには富裕層まで
すべての人に同じ割合で恩恵を与える政策です。
当然ながら、消費額が大きい人ほど減税額も大きくなります。
つまり、
本来、支援の必要がない人にまで、より多くの支援を行ってしまう
という、極めて非効率な再分配政策なのです。
さらに問題なのは、
消費税を減税しても、
その分が必ずしも価格に反映されるとは限らない、という点です。
企業は、
- 原材料費の高騰
- 人件費の上昇
- 設備投資のコスト増
といった、消費税が課税されているコストを抱えています。
そのため、最終消費税率が引き下げられたとしても、
減税分がそのまま価格に転嫁される保証はありません。
結果として、
減税したのに、あまり安くならない
という事態が起こり得ます。
一方で、現金給付は違います。
現金給付は、「マイナスの税金」として、
必要な人に対して、直接、可処分所得を増やす
という、極めてストレートな政策です。
しかも、
- 支援対象を絞る́せる
- 支援額を調整できる
- 景気状況に応じて柔軟に実施できる
というメリットがあります。
消費税減税は、
「全員に薄く配る」
政策です。
現金給付は、
「必要な人に厚く配る」
政策です。
そして、同じ財政支出であるならば、
支援を必要としている層の可処分所得を最大化できるのは、
明らかに後者です。
現金給付は、バラマキではありません。
それは、
税制の中で行う、合理的な所得再分配――
すなわち「マイナスの税金」なのです。