最近、
「食料品の消費税をゼロにしよう」
という議論が活発になっている。

一見すると、とても分かりやすい。
毎日買う食べ物が安くなるなら、家計は助かる。
物価高に苦しむ人の感覚にも、素直に寄り添っているように見える。

しかし、少しだけ生産側の視点に立って考えてみたい。

 

食料品は「売るとき」だけで作られているわけではない

農家や食品メーカー、加工業者は、
食料品を作るために、さまざまな経費や投資を行っている。

  • 肥料・飼料
  • 電気・燃料
  • 機械や設備
  • 包装資材
  • 物流コスト

これらには、現在 10%の消費税がかかっている。

今の制度では、
売るときに預かった消費税と、
仕入れで払った消費税を相殺できる仕組み(仕入税額控除)がある。

ところが、食料品がゼロ税率になるとどうなるか。

  • 売上では消費税を預からない
  • 仕入れでは消費税を払い続ける

つまり、実質的にコストが増える事業者が出てくる

 

「ゼロ税率=物価が下がる」とは限らない

理屈だけで言えば、
生産コストが上がれば、どこかで価格に転嫁される。

競争があるので、すぐに一斉値上げにはならないだろう。
スーパーが一部を吸収する場面もあるかもしれない。

それでも中長期的には、
じわじわと価格に反映されていく可能性は高い。

消費税をゼロにしたのに、物価が思ったほど下がらない
あるいは
消費税の分、値上がりする

そんな状況になるでしょう。
何のための消費税ゼロなのか、わからなくなる。

 

物価を上げないために、税はいじらないという選択

ここで、別の考え方がある。

消費税はそのままにして、現金給付を行う。

例えば、
国民一人あたり 毎年10万円の現金給付

一見すると「バラまき」と言われそうだが、
物価高対策として見ると、実はとても合理的だ。

 

現金給付が現実的な理由

① 物価の仕組みを壊さない

税率をいじらなければ、
企業のコスト構造や価格形成に歪みが出にくい。

「税が変わったから値段を変える」という理由も生まれない。

 

② 本当に困っている人ほど効果が大きい

低所得層ほど、
食料品や光熱費の占める割合が高い。

一律の減税より、
現金給付の方が実質的な支援効果は大きい

 

③ やめられる政策である

消費税は、一度下げると元に戻すのが極めて難しい。
政治的にも、ほぼ不可能になる。

その点、現金給付は
状況が落ち着けばやめる判断ができる。

これは、将来世代への責任という意味でも重要だ。

 

物価高は「自己責任」ではない

インフレや物価高は、
個人の努力だけで避けられるものではない。

だからこそ、
「物の値段を無理にいじる」のではなく、
「所得を補填する」という発想が必要になる。

消費税を維持し、
現金給付で生活を下支えする。

派手さはないが、
社会を壊しにくい、現実的な物価高対策だと思う。

 

おわりに

分かりやすさだけで政策を選ぶと、
後から歪みが出ることが多い。

生産する側、売る側、買う側、
その全体を見たときに、何が一番副作用が少ないのか。

食料品ゼロ税率より、
消費税維持+現金給付という選択肢は、
もっと真剣に議論されるべきではないだろうか。