州裁判所制度 | 法律翻訳ネタと変人観察日記

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どうもm(_ _ )m

久しぶりの法律英語のコーナーです。

今日はアメリカの州裁判所制度について、解説します。




前回 の続きです。



犯人のカール・リーが弁護人に予備審問について質問する場面です。


"When do we go to court?"

おれたちはいつ法廷に出るんだ?


"The preliminary should be tomorrow or

Wednesday, depends on Bullard."

あしたか水曜には予備審問がある。日程はバラード次第だな。


"Is he the judge?"

じゃあ、彼が裁判長をつとめるのか?


"He will be for the preliminary hearing. But he

won't hear the trial.

That'll be in Circuit Court. "

予備審問はバラードが取り仕切るはずだ。だが、公判には別の判事が出てくる。州巡回裁判所で開かれるからね。


"Who's the judge there?"

そっちの判事は?


"Omar Noose from Van Buren County, same

judge who tried Lester."

ヴァンビューレン郡のオマー・ヌース判事だ。レスターのときの判事だよ。


"Good. He's ok, ain't he?"

そいつはいい。あいつはいいやつなんだろう?


"Yeah, he's a good judge."

ああ、優秀な判事だ。


"When will the trial be?"

公判はいつになる?


"Late summer or early fall. Bucky will push for

quick trial."

夏の終わりか秋の初めだな。バックリーは迅速な裁判を推進しているから。





解説


各州には、(合衆国憲法に明記されている)連邦に譲り渡した国家権限以外の権限(教育、文化、ビジネス、犯罪・刑事政策、環境保全など)が残されています。


市民を規律する私法関係も州の権限範囲です。よって、会社法、商事民事、親族相続、刑法など多くの法律は州法になっています。


上記の問題で裁判となれば、州管轄の裁判となります。



1.州巡回裁判所(Circuit Court)


民事・刑事事件の第一審裁判所です。一般管轄権(Jeneral Jurisdiction)を持つ第一審裁判所のことを指します。ここでは事実審理(Trial)のみを扱います。

Circuit Court(巡回裁判所)と呼ばれていますが、裁判官は常駐しています。

(一般管轄権:民事、刑事、親族相続、行政全般にわたる訴訟管轄権)


Circuit Courtという呼び方は誤解を招く恐れもあるため、第一審裁判所を別の呼び方をしている州もあります。

例:

ニューヨーク州 Supreme Court (最高裁)

カリフォルニア州 Superior Court(上級裁)


その他の州でも、呼び名が異なる場合があるので、州ごとに確認が必要です。


Circuit CourtはJeneral Jurisdictionを持ち、同時に裁判記録を保管するCourt of Record (正式記録裁判所)の役割を持っています。州裁判所システムの要となります。



2.郡裁判所、地区裁判所(County Court/District Court)

アメリカの州は州内をいくつかの地区に分け、カウンティあるいはディストリクトと呼んでいます。

この地域単位であるカウンティやディストリクトに、その地域の民事・刑事の限定的管轄権(Limited Distriction)を有する裁判所が置かれています。この裁判所をCoourtunty Court(郡裁判所)あるいはDistrict Court(地区裁判所)と呼びます。


County Courtは、Circuit Courtの下位にあり、刑事においてはMisdemeanor Offenses(軽罪)、民事においては一定金額以下の訴訟に関する管轄権を有しています。ただし、管轄権の範囲は州ごとに異なります。



その他にも市町村裁判所、家族裁判所、少年裁判所などもあります。


(出典)
A Time to Kill: John Grisham (著) 出版社: Dell; Reprint版

評決のとき:ジョングリシャム(著)、白石朗(訳) 出版社:新潮文庫