プチ解説-米国連邦破産法チャプター11 | 法律翻訳ネタと変人観察日記

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経営に苦しんでいた米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は1日、ニューヨークの連邦破産裁判所に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適応を正式に申請した。米メディアによると、3月末時点での負債総額は1,728億ドル(約16兆7,000億円)で、総資産額は823億ドル(約7兆9,000億円)にのぼり、米製造業としては過去最大の破たん、米企業としても4番目の大規模な破たんとなった。(抜粋)


昨日もチャプター11の流れについて記載しましたが、本日はちょっと解説を加えてみました。

おおまかな解説ですので、詳細部分や例外ケースについては言及しておりません。



1.破産法11条更正手続の申し立て(Filing of Petition)


破産手続きが開始されても債権者は事業経営権を失わない、開始要件が法定されていないことから債権者自身による申し立てるケースが多い。



2.自動的停止(Automatic Stay)、救済命令(更正開始決定)(Order of Relief)


申立の提出により手続きが開始されるので、手続き開始と同時にOrder for Relief(救済命令、即ち開始決定)とされるので、申立ての時点でAutomatic Stayが働きます。このAutomatic Stayにより、債権者や担保権者の債権回収活動はストップできる。よって、債務者は債権者や担保権者への支払いを凍結した状態で事業運営を継続できる。



3.債務者会社の権限者(Authorized Person of Debtor Company)


債務者自身が運営を継続するケースと管財人を選任するケースがある。(GMの場合は国有化)


3-2.占有継続債務者(Debtor in Possesion)


DIPと呼ばれます。債務者財産の占有を継続する債務者自身を指す。

ほとんどのケースで、管財人を選任せずに、DIPによって事業が引き続き運営される。



4.債権者委員会(Creditors Committee)


前述したとおり、更正手続きはDIP自身によって進行されるケースが多いので、債権者の中から債権者委員を選任し、この委員が更正手続きを監視する。



5.債権・株主権の届出(Proof of Claims and Interests)・認否(Allowance or Disallowance)


裁判所が定めた期限内に届出をしないと更正計画案に基づいた配当を受ける権利を失う。

一般債権者だけでなく、担保債権者や株主権者も届け出なければならない。



6.更正計画案(Rehabilitation Plan)の → 立案、検討、投票による承認(Planning, Investigation, Acceptance by Voting)


債務者は常に構成計画案を準備して提出することができる。(申立と同時に提出することも出来る)

DIPが事業の運営にあたる場合、更正手続き開始後120日の間は、債務者のみが更正計画案を提出できる。

チャプターイレブンの手続きの計画は、債務者と債権者間で合意する契約書でもあるので、返済計画以外にも多くの合意約款が含まれる。特に債務者側が遵守すべき約定が多く書かれる。



7.裁判所の許可決定(Court Approval)


計画案に対する投票が終了し、承認された場合、計画案は裁判所の認可手続きに移る。

裁判所は、通知と審問の手続きを経た上で、連邦破産法の定める認可要件に合致していれば、計画案を認可する。


重要な認可要件は、誠実に提案されたものであること、関係者にとって最良のものであること、遂行可能で再び破産に陥ることがないこと。


8.計画の実行(Consummation)


計画に基づいて債務処理と財産管理が実行され、債権者に対する配当支払いが行なわれると、計画が実行されたものとみなされます。



アメリカのチャプターイレブン手続きは終結決定が出るのが早いので、通常は3年ぐらいで終了します。


日本の会社更生法の場合は更正開始から終結までに10年以上かかるケースが多いようです。

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