筆者が初めて担任をした時の文化祭のこと。
筆者のクラスは、『逃走中』のビデオ作品を作ることになった。
ビデオカメラ十数台を用意して、
学校の校舎全体を使って、
リアルに逃走中を行い、撮影するのだ。
「他の生徒がほとんど校舎にいない日と時間はここしかない!!」
夏休み明けのある日の夕方に、撮影を開始した。
しかし、
スタート直後カメラが逃走者を見失ったり、
指令がうまく届かなかったり、
すぐに全員捕まったりして、
グダグダのまま夜が来て撮影終了となった。
「これではどうやっても作品にならない・・・」
生徒が解散したあと、
化学準備室で途方に暮れていた。
無力感と絶望感で泣きそうだった。
というか泣いていた。
「生徒たちも同じ気持ちだったに違いない。
最高の文化祭にしてあげたかったなぁ。」
筆者が諦めかけていた、その時、
化学準備室に、何人かの生徒たちが入ってきた。
そして、こう言った。
「先生、もう一回頑張ってみようや!!」
暗闇の中に、眩しい光が現れた。
「よし、いっちょやってみっか!!」
その後、
筆者のクラスは
グランプリをとることになる。
大切なのは、
思いだ。
追い込まれたときに、
思いを持ち続けられるか。
ここに人生の全てが集約されるように思う。
それだけ、筆者にとっては
大きな希望と力を与えられる経験であった。