ある文化祭準備期間の日、
筆者が担任している高3の生徒が、
「この文章、どう?」
と筆者に紙を渡してきた。
そこに書かれていたのは、
文化祭劇部門でグランプリをもしも獲ったとしたら読むスピーチ文であった。
ちなみに劇部門は超人気部門で、11クラスが出場する。
筆者は、「すごいな…」と思いながら、
「『類稀ない』じゃなくて『類稀なる』やな」
と冷静に訂正しておいた。
そして文化祭当日。
見事筆者のクラスはグランプリをとった。
そして、表彰台に登ったとき、
彼は練習通りのスピーチを一語一句違えず行い、
会場を沸かせた。
彼にはこの光景が事前に見えていたに違いない。
準備をした者にしか、
勝利の女神は微笑まないことを、
筆者はこのとき初めて思い知らされた。