イメージ 1年明けに取り上げた『四つの最後の歌』のベーム盤と一緒に地震で散乱したLPが何枚かあって、多くは仕舞い込んだまま何年も聴かずに放置の「積ん読」盤だった。一枚一枚を手に取りながら、胸の疼きと共に彼ら彼女らを久しぶりに聴き、啄木よろしく「ぢっと手を見」て、己が様を省みたのであった。
 
◎聴いたレコード◎
《 シューベルト : 『デュオ』イ長調作品162 》(米アレグロ)
フレデル・ラック(vn)、レオニード・ハンブロ(p)
 
女流ヴァイオリンのひくシューベルトのモノラル盤。女流のシューベルトと言うと、真っ先にマルツィやオークレールの名が挙がり、モノラル盤のシューベルトならば、ロスタルやボスコフスキーの名の挙がるのが、何かに染められてしまった僕の性なれど、たまには虚心になってこういうチャーミングなのを聴くのも楽しい。因みに、一番好きなこの曲のレコードはシュナイダーハンとゼーマンの懐かしいモノラル盤で、ウィーンの光と影がもっとも美しく刻まれた得難い一枚だと思う。

イメージ 2前にもまったく同様なことを書いた気がするけれど、おっさんの繰り言みたいなものだから、容赦願いたし。これも久々に聴いて、ゆったりと歌うチェロのエロティックな喘ぎにドキドキした。
 
◎聴いたレコード◎
《 シューベルト : 『アルペジョーネ・ソナタ』 》(米デッカ)
エンリコ・マイナルディ(vc)、グイド・アルベルト・ボルチアーニ(p)
 
テンポの遅いことで有名なレコード。マイナルディおじさまのチェロは、男の色気と言うか艶気に満ちている。男臭いチェロでは「剛」のヘルシャーに対して「柔」のマイナルディ、この二人が双璧と勝手に思っていて、それぞれ硬式チェロと軟式チェロの代表格と分類している。これは米盤で、オリジナルのDG盤とはまた違った魅力がある。