母ちゃんが倒れる前、妙に昔の話しをしだしたなぁ。

特に山奥に有った、草の生えた藁葺き屋根の家で暮した話し、子供の時の太平洋戦争の訓練で裸足で雪中行軍や竹槍訓練した話し、お兄さんが若くして戦艦に搭乗し南の海で戦死し写真だけが帰って来た話し、シベリアで食べる物が無く餓死したお兄さんの話し、小学校に行く峠道で ドローーーンと空気を震わす聴いたことのない異音がし、青空のなか南の山の上にグラグラと広がるお化け雲が拡がった広島原爆の話しなど、何度も何度も繰り返し語っていたなぁ。


さっき聞いたが! と言うと妙に悲しそうな顔していたなぁ。今度は、聞いてあげるで。


今、藁葺き屋根の家がどうなっているか、石垣や畑がどうなっとるか、もういっぺん草深い森の香りが広がる道を歩いてみてぇと母ちゃんが言う。
そっとグーグルマップで見てみると鬱蒼とした森が有るばかりで何もない。
時が流れ全て自然に消えていた。

母ちゃん、元気になったら田舎の近く、車で行けるとこまで行こうか。