【執筆年月】2024年12月
2009年12月と2024年7月の出来事
今年も忘年会のシーズンを迎えていた。
場所は堺の宿院。総務職の筆者は幹事手伝い的な役どころで同僚と力を合わせ、細かい失敗もしながら何とか務めを果たした。
一次会が開き送迎バスで帰る人、次どこ行こかと会場付近で溜まる人、散り散りになっていた。二次会どこ行く?という話になったところで筆者が不意に(古巣の)ラウワンでカラオケでもどうですか?と軽く言った提案がすんなり通り、南海堺駅前で10名が集うことになった。
売上落っことしといたで。
まぁ其なりに盛り上がり、筆者的にはWin-Winで、まぁしかし筆者は終電ギリギリのタイミングで抜け出し、堺から堺東まで早足で歩き(この距離は勤務当時よく歩いていたので平気平気)、何とか最終には間に合わせた。
それはいいとして、ふと真っ暗になった南海堺駅のガードを潜った時にあるとんでもないことを思い出してしまったのだ。
それは遡ること2009年の暮れの事。同じく忘年会の後の事だった。一次会はオフィスビルの隣のホテル内のバイキングレストランで執り行われ、二次会はその駅ガード下の居酒屋だった。
当時妻帯者だった筆者(過去形www)には、職場に「気になる」人がいた。
筆者が採用面接に立ち会い、筆者のアシスタントとして採用した10歳年下の契約社員である。
今までの経緯から筆者の「悪癖」はご承知かと思うが早い話、気になる人がだんだん「好き」になっているのである。
一次会では席も離れておりあまり話もできなかった。というよりしなかった。
これはさらに11年前、初めての有馬の社員旅行の状況に似ている。大勢の前であざとい態度は見せたくないのだ。
二次会には彼女は来なかった。この時筆者はかなり酔っていた。はっきり言って典型的な酔った勢いだった。
トイレに駆け込んだ筆者は個室に籠り携帯電話を弄り始めた。
詳しい内容まで記録にも記憶にも残っていない。ただ止まらない勢いは思いもよらず「好きになっちゃった」という禁断のフレーズを誘発させてしまっていたのだった。
酔っててごめんとか、でも酔った勢いなんかじゃないよとか言い訳がましいことも挟みつつ、自分から好きな女性にSMSとはいえ告白したのは恐らくこれが最初で最後であろう。
一方の彼女の反応は……
それが悪くはなかったのだ。或いは軽くあしらわれていたのかもしれない。絵文字付きで返事をくれるのである。筆者はすっかりその気になっている。単細胞な奴っちゃ。
その後酩酊状態で帰宅しても当然眠れなかった。興奮度がレッドゾーンを振りきっていたからに決まっている。
ちなみにこの日も南海堺駅から堺東まで早足で歩き、最終の千代田行きに乗り、自宅最寄駅から5km歩いて帰っている。
それ以前から伏線的なものはあった。まあこれも筆者のもうひとつの悪癖、勝手に脈ありと自己判断してしまう勘違い症候群なのだろう。
筆者の勘はてんで当たらない。
ある寒い日、彼女が昼休みの外出から事務所に戻ってきた際、かじかむ手を擦りながら「冷たいでしょ」と言ってぎゅっと筆者の手を握って来たのだ。
ずっきゅーん!
アサルトライフルで心の臓を撃ち抜かれた衝撃を受けているのである。
そんなわけで恋の不発弾を暴発させてしまったのだ。
年が明け、放課後……じゃなかった仕事終わりに少し時間ある?とか言って彼女を誘ってみた。なまら思いきった事をするもんだ。くれぐれも言っておくが筆者は妻帯者。いくら愛されず大切に思われてなかったとしてもやってることは世間的に許されていない「文化」である。
こんな罪悪感溢れる文化的な誘いにも彼女は応えてくれて、当時の職場近くをお散歩したのだ。「お茶」でも奢ってやればいいものを、たたおしゃべりしながら旧堺港のデッキを歩くだけ。
1月か2月の寒くて風の強い日。今度は筆者の方から「寒いね」とか言いながら手を繋ごうとする。はっとする彼女(「彼女」って言ってるが正式に恋人契約を結んでいる訳ではない。she,her,herぐらいの感覚で)。
しかしそんな関係も長くは続かなかった。お互いに少しずつ距離を作り始め、遠目から見守りながら業務上必要最小限の関わりになってしまっていた。立場上、このままでは良くないとか思ったか、現実に返っちゃったかしたのだろう。そんなうちに彼女は職場を去った。
ちなみにその娘は6月生まれのB型だった。
………
なんてことを思いつつも終電の時間を気にしながら、大小路筋を早足で東に歩き続けるのだった。
そしてまた同じようなことを今年の夏、別の相手にもやっていた。
今はちょっと言いにくい事なのでかなり端折って説明するが、とある会社行事のお土産の高級食パンを3斤ももらったから1つもらって欲しい、その行事の帰り道にお家の最寄駅を通るから、改札で待ってる。取りに来てもらっていいかな?的な誘いを、仕事で使ってるダイレクトチャットを通じて送っている。
(その前日に「食パン2つ持って帰ってくるから1つもらってくれてもいい?」みたいな事前交渉をして承諾を得ているのだ)
そしたら1つじゃなくて2つ貰ってもいいよ、なんて返事がきて、うわぁうれしい!ありがとう❤️なんて事になって(この時「ありがとう」のあとに「だいすき」って思わず打ち込みそうになったのを自重している)、とある駅の改札で待ってたら来てくれて、食パン2斤を渡す手が思わず改札越しの彼女の手を握っていたなんてことをやっていたのだ。
わざと早口で分かりにくい説明をしているが、要するに愛情表現。まだ告白はしていない。いや、恐らくしないまま終わるかもしれない。
大好きな気持ちには変わりないのだが、なんか怖いのだ。色々壊れてしまいそうで。
筆者はその行事後の懇親会でもしこたまアルコールを摂取していたのだった。またかよ。
……なんか、ごめんなさい。
こんな気持ち、どうやって相手にわかってもらえたらいいのですか?
そして今日もモヤモヤした気持ちを背負いながらひとり酒を飲む。ウィスキーのストレートを。
(自分は決して自らコクったことはないと思い込んでた。この話を思い出すまでは。実は一回だけコクったんだという事実に正直驚いているのだ。俺、コクったことあるんやって。この先の事に少し自信、出た?)
