数ヶ月前(3月13日)にTwitter(記事下のアイコンから閲覧可能)で少しだけ紹介したことがある清流精舎の裏手にあったシールドルームについて書いてみたい。清流精舎の建物の裏側(道路とは反対側の川に面した方)に小さい離れのような小屋があった。


《脳波の研究用(1993年秋~)》

 この離れは部屋の広さが四畳半一間くらいだったが普通の建物と明らかに違うのは床も壁も天井もドアも室内のすべてを銅板で覆っている所である。窓は一切ない。壁と天井は銅板が剥き出しのまま、床は銅板の上に畳が敷かれた状態になっていた。即ち外部からの電磁波をすべて遮断する構造であった。


 名目上は人の脳波を測定する実験をするためとされ、私(筆者)も被験者になったことがある。しかし何と言っても教祖麻原の脳波を計測することを最優先で行うことが目的だったようである。私(筆者)はまだ出家前であり、この実験には立ち会ってはいないが、麻原の脳波から〝シータ波〞や〝デルタ波〞といった通常の意識状態ではほとんど見られない脳波が計測されたということが、教団の機関誌などで発表されていた(1993年夏頃)。普通に脳波を計測しても結果は同じだと思うが、外部からの電磁波を遮断することで実験の厳密度が高いことを主張しているものと考えられる。

 しかしその脳波が本当にシータ波、デルタ波と言えるのか?また通常の意識状態でその脳波が出るのが瞑想の極致と言えるのか?現在の私(筆者)には確かめようがない。


 私(筆者)も1993年10月末頃このシールドルームで脳波を計測する被験者になったことがあるので、その時のことを書いておきたい。私(筆者)が清流精舎に配属された数日後に、京大出身のMさんが出家信者として配属された。何と彼女も一緒だった。そういえば書き忘れていたが、先輩信者T君も彼女と一緒に出家していた。

 Mさんは人の脳波を測定し分析する技術ノウハウを持っていた。それを麻原や村井秀夫らに見込まれ出家そして清流精舎への配属という具合になったのだろうと思う。
 


 とある一日、睡眠から目覚めるとT君と彼女の信者Hさんに声をかけられた。

「〇〇さん・・少し眠そうですね。脳波の測定に協力してもらえませんか?」
「はい、いいですよ」

といった話をしているうちに、MさんとMさんの彼女のOさんも合流してきた。結局MさんとOさんが私(筆者)の脳波測定をすることになった。シールドルームに入り何ヵ所か頭部に電極を装着された状態になり、測定が開始された。

 「後頭部からアルファ波が出てますね」とOさんが言った。私は寝起きだったからかも知れないと思ったが、アルファ波が出ている状態とそうでない状態はほとんど区別がつかないものだと自覚した。

 ひととおり測定が済んだ後、Mさんがこのように言った。

「すみませんが性欲が出た時の脳波を録りたいので、これで協力してもらえませんか?」

 と言って何とエロ本を私に差し出した。サマナはエロ本を読むのは戒律違反なのだが、村井秀夫ら上層部には実験のためということで許可をとってあるらしい。私(筆者)はこの手渡されたエロ本をめくりながらこう言った。

「申しわけありませんが、私はエロ本では興奮できないんですよ」

 Mさん達は少しがっかりした様子だったが、それ以上の無理強いはしなかった。Mさん達が断念したので私(筆者)は言おうと思っていた言葉を寸前の所で引っ込めた〝本物なら別ですよ〞。OさんはMさんの彼女である。私(筆者)はそこまでして自分の性欲が出た時の脳波を録りたいとは思わなかった。

 命ある限り性欲はある。「私は性欲がない」「私は性欲を克服した」などとは大嘘だ。しかしそれをどのように表現するのか?どのように対処するのか?という言葉や行為振る舞いで性欲にとらわれている・いない、といった評価になるものだと私(筆者)は考えている。

 まあこんなものかな、というのが被験者になった感想だった。


 

《電磁波攻撃からの(麻原の)避難用?》

 外壁をすべて銅板で遮断したシールドルームなので、外部からの電磁波の侵入を防ぐことができる。だが部屋の広さは四畳半1間、とてもサマナ達を収容することなどできない。即ちこれは〝緊急時の麻原だけの避難用〞に造ったものと考えることもできる。しかしこの狭い部屋で長期間過ごすのはさすがに麻原でも無理であろう。外部からの電磁波攻撃も考えられなくはないが、当時は私(筆者)はそういう話題を見聞きしたことは記憶にない( 現在はある!)。恐らくは一時的なパフォーマンスに過ぎないだろう。

 しかし村井秀夫らの幹部は1993年の時点でそのようなことまで想定して、実際に小規模ながらも電磁波攻撃を防ぐことができる施設を作ったのである。このある意味〝歪んだ真剣さ〞が後々大きな被害を産み出す事件へと繋がっていった可能性もあると私(筆者)は思っている。

(後編に続く)