久しぶりの投稿です。
このところ休日が少ないので、なかなかブログを書く時間がありませんでした😅
さて、今回は、最近見たテレビ番組で印象的だったものをご紹介します。
それでは、さっそくスタートです
ロック浪曲
まずは、1月に放送された番組から。
(↑今さらですが😅)
この『NHK浪曲特選』という番組では、通常の浪曲の他に「ロック浪曲」というものも紹介されていました。
ふつう、浪曲は太棹三味線に合わせて物語を歌い、語るものです。
ですが、ロック浪曲は違います。
浪曲師は、春野恵子さん。
ギターは、東野ひろあきさんでした。
普通、浪曲は着物姿で演じるものですが、春野恵子さんは少し違いました。
着物をアレンジしたものを着て、アルファベットの模様が入った帯を前で結び、黒いロングスカートを合わせていました。
(もしかしたら、袴だったのかな?)
とにかく、可愛かったです
披露された演目は、『おさん茂兵衛』。
訳あって、女将・おさんと、手代・茂兵衛が逃避行することになるというお話です。
ロックの名曲を替え歌で歌い、セリフだけの部分も挟みながら、物語が進んでいきました。
以下に、物語の内容を簡単にまとめます。
まず最初は、ご挨拶として、Queen の We Will Rock You という曲から始まりました。
続いて、The Beatles の Get Back 。
春野恵子さんは、歌いながら登場人物を紹介していきます。
最初に紹介されたのは、おさんの夫。
この夫は、ひどい女たらし。
夫は、女中のお玉と何やら揉めていた様子です。
何事かとおさんがお玉に話しかけると、意外な事実が判明します。
ここで曲が、もんた&ブラザーズのダンシング・オールナイトに。
お玉が言うには、旦那さまは夜な夜な自分の寝室に忍び込んでくるとのこと。
その様子が、こんなふうに歌われます。
「♪ 旦さん オールナイト」。
これ、もともとは、
「♪ダンシング オールナイト」
ですね。
お玉の話は、まだ続きます。
「近頃では、私があまり旦那さまの言うことを聞かないので、旦那さまはお腹立ちになって、私が手代の茂兵衛さんとできているんじゃないかお疑いなのです」
そう言って泣くお玉。
かつて、奉公人同士の恋愛は禁止されていました。
ここで、曲が変わります。
The Beatles の Come Together です。
夫の悪行に腹を立てたおさんは、こう歌います。
「♪ 腹 立つわ 殴ろうか ほんまに」
これ、原曲の歌詞はこうなっています。
「♪Come together, right now over me」
原曲と旨い具合にシンクロしているのがお分かりでしょうか?
「ほんまに」と「over me」は、日本語と英語で、それぞれ近い母音にしてあります
「honma ni」「over me」
「お」と「い」の音が似てますよね。
ここでまた曲が変わります。
Carpenters の Close to you (邦題は『遥かなる影』)です。
ここで、おさんは名案を思いつきます。
今夜だけ、お玉とおさんの寝る部屋を入れ替えるのです。
そうすれば、おさんの夫は、お玉がいる部屋へ夜這いするはずなのに、実際には妻のおさんのもとへ忍び込むことになるわけです。
おさんは夫を待ち伏せて、文句を言うつもりです。
さあ、ここで曲がガラッと変化します。
The Beatles の I Want To Hold Your Hand (邦題は『抱きしめたい』)です。
お玉の部屋でおさんが待っていると、暗闇の中、男が手探りでやってきました。
捕まえた!
おさんが手を取ると、なんとそれは夫ではなく、手代の茂兵衛。
いったいどういうことでしょう?
と、ここで、夫が外から帰宅。
「旦さんのお帰りでっせ、御寮はん」
奉公人たちは、口々におさんを呼びます。
さあ、大変。
歌は、サビにさしかかります。
「♪ アホな ごりょ はァァァん」
原曲は、こうです。
「♪I want to hold your hand」
これ、英語の発音に近いようにカタカナ表記するとこうなります。
「♪ アワナ ホージョ ハァァァン」
日本語と英語の音がかなり似ていることにお気づきでしょうか。
よくこれを考えたなぁと感心するばかり。
お見事です
英語と関西弁って、相性がいいんですね
ここで、次の曲へ。
The Beatles の Hey Jude です。
お玉の部屋へ忍び入った茂兵衛ですが、実はこれ、旦那さまの悪行を見かねて、お玉を助けるためでした。
暗闇で待ち構え、首になるのを覚悟で、旦那さまにもの申すつもりだったのです。
部屋の外では、おさんを探す声がずっと聞こえています。
なんてバッドタイミングなんでしょう。
おさんは、部屋から出るに出られません。
茂兵衛と隠れているのを誰かに見られたら。
見つかり次第、すぐに浮気と思われてしまいます。
当時、女性の不義は天下のご法度。
浮気相手と共に死罪になります。
おさんは、茂兵衛に呼びかけます。
「♪もへいさん」
これ、原曲ではこの部分です。
「♪ Hey Jude」
「へい」の音が合わせてあります。
よく思いつきますねぇ。
くすっと笑ってしまいます
おさんは、実は前から茂兵衛のことが好きでした。
そう打ち明けると、なんと茂兵衛も、おさんに一目惚れしていたと話しました。
でも、茂兵衛は奉公人です。
おさんは、旦那さまの奥さん。
身分違いの恋は許されないため、ずっと気持ちを押し殺していました。
それを聞いたおさんは、一緒に裏木戸から逃げましょうと提案します。
「♪裏 裏 裏 裏木戸へ 逃げましょう」
原曲は、こうです。
「♪Na na na nananana, nananana」
これも、日本語と英語で母音が揃えてありますね。
「Ura」と「Na」で、「ア」の音が共通です。
もともとの曲を知っている人にとっては、本当に楽しい替え歌です
さあ、また曲が変わります。
シンディ・ローパーのTime After Time です。
逃避行中の二人は、気持ちが通じ合っているので、お互いに黙っていても平気です。
サビでは、こんなふうに歌います。
「♪な に も 言 わ ず
い つ ま で も 黙っ て た」
原曲では、こうなります。
「♪If you're lost you can look
and you will find me Time after time」
英語と日本語で、音節の数が一致しているのがすごいですね。
たとえば、「If you're lost」は3音節。
これに対して日本語では、「なにも」と3音節の歌詞が付けられています。
他の部分も同様です。
すべて音節の数が一致しています。
私、大学時代は英文学や英詩を学んでいたので、こういう「韻」や「音節」の話は大好きです
さあ、いよいよ大詰めです。
ただ、最後の曲は、残念ながら私の知らない曲でした
逃避行していた二人は、京の都が懐かしくなります。
もはや二人は、主人と奉公人の関係ではなく、「おさん」「茂兵衛」と名前で呼び合う仲。
サビでは、高らかにこう歌います。
「♪一緒にいるだけで 幸せやけど
ホンマの望みは アー 抱きしめ合いたい」
お互いの気持ちを確認し合った二人は、死ぬ覚悟で京へ戻ることを決意したのでした。
ここまで、本当に圧倒的な舞台でした。
歌唱力もすごいし、セリフ部分も素晴らしく、顔の表情もとても豊かでした
いいものを見せていただき、幸せです
もし、いつか春野恵子さんが私の地元に公演にいらしてくれるなら、絶対聞きに行きたいなと思いました
能『檜垣』
次は、2月に見た番組のお話です。
月末に、NHKの『古典芸能への招待』という番組で、能『檜垣』が放送されました。
『檜垣』のあらすじを簡単に説明します。
物語前半の主役は、ある老女。
この女性は、毎日仏さまへお供えする水を汲んで山道を運んできます。
ある日、お寺の僧侶が老女に名を尋ねました。
すると老女は、自分は後撰集に和歌を残した檜垣という者だと名乗り、姿を消します。
この老女、実は檜垣の幽霊です。
檜垣は、かつて美しい白拍子として人心を惑わしたため、今は地獄の責め苦を受けているのでした。
物語の後半では、檜垣が昔を偲び、僧侶に舞いを見せます。
そして、かつての罪が消えるよう僧侶に回向を頼みます。
さて、前半の老女は、悲しみにうち沈んだ面持ちでしたが、物語の終わりには、とても穏やかな表情をしていました。
檜垣を演じた方は、能面をつけています。
素顔で演じているわけではありません。
生身の人間ではなく能面なんですから、実際にはその表情が変わるわけはないのです。
でも、確かに変わったと感じるんです。
すごいものですね
老女(檜垣)を演じたのは、人間国宝の金剛永謹さん。
能面は、角度によって表情が変わると聞いたことがありますが、こんなに変化するなんて驚きました。
さすが人間国宝ですね
僧を演じた宝生欣哉さん(人間国宝)も素晴らしかったです。
深くてよく響く声が素敵でした。
地謡の方たちも、いい声でした。
独特の発声と抑揚とリズムがとても心地よかったです。
私は能を屋外で見たことはあるのですが、まだ能楽堂で見たことはありません。
テレビ越しでもこれだけ音が響いているんですから、生で能楽堂で見たらもっとすごいだろうと思います。
いつか行ってみたいなぁ
吹奏楽と指揮者
続いては、吹奏楽のお話です。
これは伝統芸能には関係ないのですが、楽しい番組でしたので、ご紹介します。
『体感! 迫力のマルチ画面 ~華麗なる吹奏楽の世界~』と題されたこの番組。
そのタイトル通り、本当に迫力ある映像でした。
この番組では、40台のカメラが演奏家の近くに配置されたそうで、それぞれの曲の中で、そのとき一番活躍している楽器がアップで映し出されました。
しかも、一つの画面を複数に分割して、演奏中にいくつもの楽器を間近で見られるというたいへん贅沢なものでした。
もう、どの画面を見ても見どころ満載で、「どこを見たらいいのか迷う~!」と目移りするほど。
この楽器、こんな音なんだ
ピッコロの超絶技巧、すごっ
ドラムセットのシンバル、最高
こんなふうに、見ていてすごくワクワクする番組でした
それは、福引きに使うガラガラの巨大版みたいな楽器。
後で調べてみると、ウインドマシーンという名前らしく、風の効果音を出すための楽器だそうです。
↓こんな感じの楽器です。
この番組で演奏していたのは、東京佼成ウインドオーケストラの皆さんです。
指揮は大井剛史さんでした。
こんなに楽しそうに指揮をする方は、始めて見ました。
本当に音楽が好きな方なんだなと感じます。
曲によっては、指揮というより、踊っていると言った方がふさわしい場面もありました。
この番組、いいですね
もし次回があるなら、また大井剛史さんの指揮で同様の企画を組んでいただきたいです。
初心者に分かりやすいように、楽器の名前も書いてくれるともっと嬉しいです。
お願いします、NHKさん
皆さんが読みやすいように、長文は避けようといつも思うのですが、ついつい長くなってしまいます。
もはやこれは、習性ですね
文章を書いていると、ホント楽しくて、時間も忘れてしまいます
次はいつ更新できるか分かりませんが、それまで気長にお待ちいただけると嬉しいです。