【480字シリーズ】書評……摘菜収『ゲーテの警告 ~日本を滅ぼす「B層」の正体~』 | 狂直の日記

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 本書は、「B層」というキーワードを軸に、我が国の置かれた状況を読み解こうとする本である。「B層」を「マスコミ報道に流されやすい、比較的IQの低い人たち」と定義づけ、大衆受けが優先されることで文化が変容し政策の選択肢が狭まるという問題が生じているとする。しかし「B層カルチャー」に対する紹介と批判が続くだけで、現象面だけを追っており、原因の分析と対策は見られない。

 

「大衆民主主義や大衆迎合に対する警戒心は保守派が概ね抱くところで、本書はそれを具体例を挙げて述べたもの」との肯定的評価については、どうであろうか。 

 

 しかし、大衆に起因する問題は、欧米諸国や戦前の我が国も抱えていた問題である。したがって「B層が悪い」と連呼するだけでは、我が国の抱える問題の解明や解決に役に立つとは思われない。

 

 このように、本書において新たな知見や問いかけが見出されているとは言えないと考える。また参考文献一覧に著名な思想家の著作を列挙しているのは、筆者は自分の主張を自分でも理解していないのではないかとの不安を抱かせる。

 

※摘菜収『ゲーテの警告 ~日本を滅ぼす「B層」の正体~』(講談社+α新書、2011年)