【480字シリーズ】書評……三好範英『ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱』 | 狂直の日記

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多摩武蔵守のブログです。
こちらのブログは政治話中心で行こうと思います。ブログタイトルは『三国志』虞翻伝の評より拝借しました。
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 480字以内で書くというテーマでやってみることにしました。今回はその第一弾です。

 なおこの「480字シリーズ」は字数の節約のため「だ・である」調でお送りします。

 

 本書は2015年に発行されたもので、ドイツの政策や行動の根底にある思想や考え方を読み解こうとした本である。本書は現実より願望やイデオロギーを優先させるドイツ人の性格が根底にあると指摘する。具体的な例として、福島原発事故を受けての急激なエネルギー政策転換、EU通貨統合への執着、ロシアや中国への接近と共鳴を挙げている。


 個人の性向や国民性を、政策決定と直接結びつけているきらいがある点については、どうであろうか。


 しかしドイツには、合理主義に対して感情を重視するロマン主義が広まったり、ナチズムやユダヤ人絶滅政策への反動から来る贖罪イデオロギーが支配的となったりした歴史的経緯がある。それらが倫理の過剰な強調や理想主義的解決を求めるという集団の価値観を規定し、マスメディアの編集方針や政党の政策にも影響を与えているとする。


 このように、本書におけるドイツの分析は、価値あるものと考える。また我が国は闇雲にドイツを見習うのではなく、自己の理念と利益をもって向き合うべきと暗示している。