今から約40年前、娘と同じ小学校での出来事
確か小学3年の学芸会だったと思う。
その頃の小学校は1学年が150人弱で
学芸会で役がもらえる子供はほんの一握り、
つまりエリートのみが選ばれた場であった。
出し物は『3匹の子ブタ』。
有名な話である。
有名な割には過去にとらわれないメタボは
ストーリーをほとんど忘れている。
覚えているのは主人公がブタのブー、フー、ウーだったこと
主人公の敵が狼だったことぐらいである。
メタボはクラスの投票で『すずめ2』に選ばれた。
『すずめ』は1から3まであるのだが
当時は1学年3クラスだったので
各クラス1人づつ選ばれたのだった。
今でも『すずめ』のセリフは鮮明に覚えている。
すずめ1 「わらの家は風が吹くと飛んでいってしまうよ。」
すずめ2 「木の家は火がつくと燃えてしまうよ。」
すずめ3 「レンガの家は風が吹いても、火がついても
平気だよ。」
こんな感じである。
今のように全員参加ではないので
毎日授業後に練習である。
すっかり人格までも『すずめ2』になりきって
演じていたメタボ少年にもひとつだけ
不得意なものがあった。
「スキップ」
『すずめ』 は皆舞台の向って右側から
スキップをして登場。
中央でセリフを喋り、向って左側に
スキップをして去るという段取りである。
その重要なスキップがメタボ少年のアキレス腱であった。
毎日居残りでスキップの訓練を担任と
マンツーマンで特訓する。
学芸会前日、多少の不安をいだきながら
担任の三浦先生はメタボのスキップを合格と判定した。
学芸会当日の観客は生徒と保護者あわせると
1000人を超えている。
緊張するなと言うほうが無茶である。
当然のように『すずめ2』の心臓もバクバクだ。
舞台のそでで出番を待つ。
『すずめ1』は無難にこなした。
『すずめ2』は考えた。
「苦手なスキップを少しでもごまかせるよう
勢いよく舞台の中央まで行こう。」
スキップの3歩目、勢いよく繰り出した右足は
左足のかかとの部分を蹴り上げた。
行進の時、足の送りを変えるときに使う
ツーステップの激しい奴である。
『すずめ2』の目に講堂の天井が映し出された。
サッカーのオーバーヘッドキック状態でなぜか
後頭部が気になった。
後頭部が直接床に叩きつけられるのは危険
と判断したのだろうか、『すずめ2』は体をひねった。
顔から落ちた『すずめ2』の鼻血で赤く染まる床。
体育教師に担がれて保健室に向かう
すずめのお面をつけた小学生。
舞台では機転をきかし『すずめ2』のセリフまで
カバーする『すずめ3』が何事もなかったかのように
芝居を進行していた。