「夏と花火と私の死体」 乙一

「夏と花火と私の死体」「優子」 2編収録。

 

 

「夏と花火と私の死体」

 

 

9歳の五月は、夏休みに同い年の弥生と木の上にのぼり遊んでいたが、弥生の2つ上の兄の健を好きだと言うと弥生に突き落とされ死んでしまい、弥生と健は五月の死体を隠すことにする。

 

 

ジャンプノベルで大賞を受賞した1996年、乙一は17歳だったと知り、ああそうだったと思い出して驚愕する。

それから30年、今も書き続けていることに尊敬の念がわきあがる。

こういう人もいるんだなあ。

 

この話のおもしろいところは、小学生の兄妹が同級生の死体をどうにかして隠そうとするところと、何度も見つかりそうになる危機を乗り越えるところ、そしてその状況を死体であるところの五月が語るところ。

 

恨みを募らせたり呪いをかけるでもなく、淡々と、時に自分の足がゴザからはみ出し誰かに見られそうになることを恥ずかしがったりもしながら、状況を観察し語り続ける五月の静けさに背筋がぞくぞくするのである。

 

子どもの素直さゆえか、それとも死んだとき、私もそんなふうに静かに観察することができるものなのか、興味がわいてくるのだった。