フランスの世界的ファッションデザイナー、ユベール・ド・ジバンシィが91歳の生涯の幕を閉じました。
 
映画「ティファニーで朝食を」で、主演のオードリー・ヘップバーンの衣装を手がけたことで知られ、そのエレガントなデザインはアメリカのケネディ元大統領夫人のジャクリーンや、ハリウッド女優からモナコの公妃となったグレース・ケリーら、多くの著名人からも愛されました。
 
 
私が百貨店に就職し、配属されたのがこの「ジバンシィ」でした。
販売経験もない私が、いきなり高級婦人服ブランドの担当となり、そこから大先輩の接客する背中を見ながら毎日が必死でした。
「いつかジバンシィで日本一の売り上げを達成する」
その思いで、仲間4人でひたすら頑張り続けた日々。
誰もいなくなった売り場で、私達だけがいつも夜遅くまで仕事をしていました。警備員さんからも早く帰るように注意され続け、しまいには黙認…に近かったような…。
そしてついに数年後、悲願の「年間売り上げ日本一」を達成。
チームワークと、本当に一人一人の努力の賜物だったと思います。
みんなで泣いた日のことは忘れられません。
 
なぜそこまで頑張れたか。
 
それは、地方百貨店としての意地もありましたが
何よりジバンシィの作る洋服に惚れ込んでいたからです。
本当に素晴らしいと思う洋服だから、心から自信を持って
接客し販売することができました。仕事は厳しかったですが、幸せでした。
 
当時は日本で縫製するライセンスものと、フランスから届くインポート、両方扱っていましたがどちらも素晴らしい洋服でした。仕入れにも行かせていただき、毎回1億円近い買い付けをし、それを一切セールなしで売る。しかも毎月、毎年増えていく予算をクリアしながらです。
それが私たちジバンシィメンバーの誇りでした。
 
そんなチームのリーダーが、今だに尊敬してやまない大先輩のYさんです。
私は入社以来ずっとその先輩の背中を見て学ばせていただきました。
私とは一回りも違いますが、今も売り場の守り神。現役です。
最高齢の顧客は90歳代。今も数名の方が通い続けてくださっているそうです。私がいた当時のお客様もいらっしゃり、愛し続けてくださっていることに深い感動を覚えます。
実際パリのショーでジバンシィにも会われているYさん。帰国後、目を輝かせながら語ってくださったお話は忘れません。
今だに売り場に足を運ぶたび満面の笑みで迎えてくださり、昔話に花が咲き、つい長話になります✨
 
ジバンシィが天に召されたことを知り、一つの幕が下りたような寂しさを覚え、なんとも言えない気持ちになった今朝。
 
Yさんのお顔が見たくなり、ジバンシィを訪れました。
 
そこで撮ったこの写真。
多くの言葉はいらない…。
二人の胸の中にある思いは同じだったと思います。
 
「エレガント」を追求したジバンシィ。
  当時、無理をして買った大好きなジバンシィの洋服たちは
今もクローゼットで輝いています。
 
袖を通すことはほとんどないものもありますが
今も活躍してくれているものもあります。
縫製も素材も良いので、いつまでも着られます。
思い出の詰まった宝物たち、手放せません。
 
ジバンシィは私の社会人としての原点。
 
ここからスタートした自分の人生が大好きです。
 
エレガントの星  ⭐︎  ユベール・ド・ジバンシィ氏
どうぞ安らかにお眠りください…。