サランコットに住み始めて数か月が経過し、そろそろビザが切れようとしていた。
世界一周の旅もこれで終わりと自分に言い聞かせ、帰国の途につかないといけない。
旅の最後にネパール人彼女という最高の出会いがあるなんて予想もしていなかったが、もしかしたらこの出会いのために旅があったのかと思う。
今後、サムジャナとは国際恋愛という難しい局面に入るが必ずまたネパールへ会いに戻ってこようと誓った。




そして、2013年の8月に帰国。
俺の世界一周は終わった。




帰国後はFacebookやSkypeを使って、サムジャナと連絡を取ることになる。
当時サムジャナの家ではネット回線を繋げていなかったので、俺が日本から国際電話をかけていた。
Skypeには国際電話機能もあるのでそれを利用する。
通常のスカイプと違って料金が発生するが、Skypeを通じて相手の固定電話へ掛けることができるサービスだ。
これなら相手がネットを繋げてなくても、国際電話がかけられる。
しかしサランコット村のような都市部から離れた山村だと、電波の状況が悪くて電話回線も頻繁に途切れるのだ。
酷い時になると1分おきに回線が切れるので会話にならないこともある。

スカイプを使用中




俺「ナマステ~元気?」
サ「ナマステ~」
俺「家族はどう?みんな・・・・ゲン・・」
サ「え?何?聞こえ・・・・」

俺「か・・・ぞ は、、、、ですか?」
サ「・・・・・・で・・・・・・・ひ・・ま・」
俺「そ・・・めと・・・・・・る・・・・じ・・・・・」
サ「うん・・・・・・きこえて・・・」
俺「え?よ・・・・・ね」



ピィィィィ!!(Skypeの通信障害の音)



俺「うわ!うるさっ!」



ピィィィィ!!
ブチィ!




俺「あ、切れた」






しばらくしてSkypeをかけ直す。



俺「もしもーし!」
サ「は~い」
俺「さっきはごめん、いきなり切れた」
サ「うんいいよ、わかってる」
俺「でさ~このまえ、・・・・のとこ・・・たら・・・」
サ「うん?ちょっと聞こえない」
俺「・・・の・・・・・・・」


ピィィィィ!



俺「うわ!またかよ!」



ピィィィ!
ブブブブブ~~~
ブチィ!





俺「あ、切れた」





以下ループ





こんな調子でSkypeをしてるから、相手が何を言おうとしてるかよく分らないので推測しながら会話していた。
Skypeの調子悪いというよりサランコット村の電波が悪かったり、ネパールの計画停電で切れることが原因なのでどうする事もできない。
ただでさえ遠距離恋愛で関係継続が難しいのに、さらにネパールのお粗末なITインフラ事情が重なって連絡するのが非常に厳しかった。
代わりにFacebookで連絡を取ろうとしたが、サランコット村はモバイル事情も悪くてFacebookすらほとんど繋がらなかった。

3年間で、「もう遠距離恋愛は無理!」と諦めそうになったことも正直ある。
サムジャナの方からアクションを取ることがほとんどないので、俺の一方的な片思い?と疑心暗鬼になったこともあった。
それでも3年後にネパールへサムジャナに会いに行こうと思ったのは、約束を破りたくなかったからだ。
ここで約束を破ったら、今までの事が全部嘘になってしまう。
二年間の旅も、サランコットでの数か月も、サムジャナと別れ際に約束した結婚も全部なかったことになる。
それだけは嫌だった。







3年の間にぐるぐると色々考えた。
サムジャナに会いたい。
でも結局、結婚出来なかったら?
サムジャナは俺に「ネパールへ会いに来て」というけど、日本ではなくネパールの家族と普通に暮らしたいと思ってるかもしれない。
ネパールのような大家族制度の国は、家族が助け合いながらでないと生活できない。
サムジャナがいなかったら、あの一家はどうなる?
俺が無理やり連れてきてもいいのだろうか?
お金のこと、言葉の壁、宗教文化の違い。
結婚できても、そこからが大変だ。
国際結婚は離婚も多いと聞く。
もし離婚したら、サムジャナはどうやって生きていく?
ネパールへ帰るのか、それとも日本にいられるのか?


今なら、「旅先でのアバンチュール」として、彼女を忘れることも出来るだろう。
サムジャナもいつしか俺のことを忘れて、やがて誰かと結婚していく。
俺は旅が終わり、普通の生活に戻っただけ。

考える時間はたっぷりあった。
でも結論はいつも同じ。
サムジャナに会いたい。
会ってもっと話したい。
結婚できるかは分からないけど、単純に会いたかった。



 
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