狙った感じじゃないのがいい。周囲の反応を期待するわけでもなく、遠くの誰かに見せるために近くの誰かに撮らせているわけでもない。
ましてや自分たち自身にカメラを向けて、いわゆる自撮りをしているわけでもない。何かの練習なのか、それとも単に遊んでいるだけなのか、いずれにしても存分に楽しんでいる様子だ。

「ほな、行くで」
「うん」
「せぇ~の」

 ……
 ……

「あかんやん、ハハハ」
「ごめんごめん、右からやったね、よしっ!」
「よしっ、て……。ほな、も一回やで。せぇ~の」

 窓越しのため細部までは判らないが、こんなやり取りだったに違いない。

 二人の女の子たちは、キッと顎を上げ足を踏み出した。頭の上から糸で引っ張られているような感じで背筋を伸ばし、胸を張り、お尻を上げ、歩調を合わせて颯爽と歩く。小生には見えないが、恐らく二人の前にはランウェイが伸びているんだろう。

 いわゆるモデル歩きは否が応でも目を惹く。と思ったが、周囲の人たちは手元の機械に夢中なようで、どうやら誰も気がついていない様子だ。もしカウンターの隣の席の女性がこの窓ごしの光景に気付いていたなら、お知り合いになれるチャンスではあったが、彼女たちのレビューは、ほんの4~5mで終わってしまったから、残念ながらそれも叶わず仕舞いになってしまった。もっとも、手元の機械の上で激しく指を滑らす仕草が見えた時点で、積極的にお知り合いになろうとすることはなかっただろうが、それはともかく、何かしらいいものを見せてもらった。
 
 はしゃぐ彼女たちの表情がいい。