確かに、先ほどから少し気にはなっていたんだ。

 チラチラとこちらを見る目がちょっと違うと、何となく感じていたが、まさかそんな目で見られていたとは思いもしなかった。どう思えばいいのか少しばかり複雑だが、まあ小生的に見れば、まだまだ捨てたものではないと喜ぶべきなんだろうか?


「えっ~! 親子なんですか? 私てっきり怪しい関係なんだと思ってました」

 彼女の驚きぶりを見ると、どうやら本気でそう思っていたらしい。

「スイマセン、奥でもちょっとそんな話をしてたんです」

 オイオイ……。


 就職活動中の娘から相談したいことがあるとの連絡が入り、急ぎ仕事を済ませて梅田で待ち合わせ。まあちょっと軽く飲みながら聴きましょか、とふと目についたお店は、まだ人はまばらながら、どうやら予約のお客さんが多いらしく、カウンターに通された。とりあえずのビールに、またまた目についたピクルスをつまみながら、受けてきた面接についての内容を踏まえて次の面接へのアドバイスやアイデアが欲しいとのことで、いろいろと相談になっていたところがこれだ。ビックリしてしまった。確かに、娘から相談を受けつつも、深刻な話はしていないから、いい関係に見えたのかもしれないが、それにしても怪しい関係を疑ったとすれば、変な想像をされていた可能性もあるわけだから、ちょっと困りものだ。

 幸いにも、たまたま「スマホをお持ちなら……」の問いかけに、「ボクはこれやから、娘に……」と腐れ携帯を見せつつ返答したことで気付いてくれたからよかったものの、そんな問いかけがなかったら、帰った後も変な噂になっていたに違いないのであって、後日またこのお店に来ようものなら、「あの人よ……」などと、あらぬ噂が再燃することになっていたかもしれないのだ。Oh! くわばら、くわばら……。

『私たちは親子です』みたいなバッジを付けるわけにもいかないし、これからは極力周囲に聴こえるよう、親子の会話をアピールしなければいけないのかもしれない。

 まあ、そんなことを思いつつも、彼女はいろんな人と話ができるからと就職活動を逆に楽しんでいるようで何よりだ。納得できる結果になればと思う。